夜の皇帝となれ２ (ページ29)

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「"親にわたす呪骸作成に死体の皮を使ったのなら、残りの肉はどうしたのか"と思っていたけど……なるほど、食われる肉を補填していたわけだ」

「死体を使ったとはいえ、こんな男がどうやって、あの精巧な呪骸を仕上げたのか、というのは疑問でしたが……」

「現代の呪術師がおいそれと作れるもんじゃない。おおかた古い呪術師の家系の成れの果てが、蔵の底から掘り出したって呪具……もとい、暴走呪具ってとこだろ」

「待って、もう何言ってるかわからへん……。とりあえず、アイツは呪具に呪われてて、おまけにアイツに悪意があったことは明白ってこと？」

「そういうこと。ここは要勉強だね」

「ややこしい送金体制まで用意していた以上、最初は純粋な金儲けだったのでしょう。そもそも情状酌量の余地はないでしょうが……」

心底疲れたように、七海がため息を吐く。

「死体どころか生者も貪る代物だ。悠長に構えちゃ、いられないでしょ」

いかにも気怠そうに、五条が肩を落とす。

「これもまた慈悲、ってヤツか」

胸くそ悪そうに、宵蔵が顔をしかめる。

人肉を食み、人形を生み出す人形。その肉を賄うため死体を集め、それでも間に合わず、今や人形に取り憑かれた人形師。

そのどちらも、おおよそこの世に存在して良いものではない。

七海と五条、宵蔵の表情は、同じ部類のものだった。籠められた感情は、諦観。現状を受容した人間の顔。

それは＿＿救いを求める人形師にとって、喜ばしいものであるはずもなく。

「えっ、あっ、あアっ、た、たす、タスけて、クレ、くれるんじゃ……？」

「いや無理だろ。分かるでしょ、自分で」

「これほど状況が進行していなければ、家入さんなら切除できたのかもしれませんが」

「これはもう……ねぇ？」

「帝夜。ダメだよ」

宵蔵が拳銃の引き金に手をかけたのを、五条が制した。まさか止められるとは思っていなかったのか、宵蔵は目を見開いた。

「今回は帝夜の出る幕じゃない。言ったろ、特別授業って」

「……なるほどな」

その横で、七海が背に手を伸ばす。