34 ページ35
学校帰り久々に飲み物を買って、蓮と家の近くの公園に寄り道した。
ベンチに腰掛ける私と蓮。
「まだ全然暑いね」
「残暑って感じだな」
「残暑なんて言葉知ってるんだ」
「最近知った」
淡々と言う蓮に思わず笑った。
「...最近笑えてなかったでしょ」
その言葉で蓮のほうを見る。
俺が言えることじゃないけど、と続けて彼は言った。
暑いのに辺りはもう夕焼け。
夏が終わっていく寂しさが、自分の心と重なって思えた。
「...ここで一緒に花火見たなあ」
近くの公園からだと花火綺麗に見えるんだって康二に教えたんだよね。
不意に影が重なって。
幸せだったあの頃が、遠い昔のように思えて仕方ない。
.
「...時間が経ったら、久々に康二のこと思い出して、そんなこともあったなって思えるのかな。
今は全然思えないけど」
今日も普通に避けられたなあ、と乾いた笑い声と共に言葉を放った。
蓮は何も言わない。
「自分がこんなに面倒な人間だと思わなかったな。
ごめんね蓮、帰ろっか」
返事をしない蓮にさほど気を留めることなく立ち上がった時、強く腕を引かれ、ベンチに再び座らされた。
「蓮？」
...え、
「泣いてる...？」
そう聞くと蓮は、ごめん、と言って顔を拭いた。
そして私に向き直って口を開く。
.
「...俺のせいなんだ」
「え？」
「...Aが康二と別れたのは、俺のせい」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 129人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：キキララ
| 作成日時：2021年9月19日 23時
