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「A、大丈夫だった?」
お昼休み、一緒に食堂でご飯を食べている時真央が聞いてきた。
「何が?」
「...ほら、向井くんとノート一緒に持ってきてたから」
真央が気を遣って小声で話す。
.
「まあ、避けられてる感じはあった。
...当たり前、だよね」
笑顔を作る私を見て、真央は心配そうな顔をする。
「真央がそんな顔しないでよ」
「だって...」
「...あとさ、もうお腹いっぱいだからこれ食べてくれないかな」
「全然食べてないじゃん」
「食欲なくて」
「A、最近あんまりご飯食べなくなったね」
「...ただの夏バテだよ」
そうじゃないことぐらいわかってるのに、また嘘を重ねた。
そして放課後。
席も離れた康二は、私に挨拶することなく教室を出ていく。
これも初めてじゃないのにな。
何もしたくなくなって、日直の最後の仕事の黒板消しの前、蓮に一人で帰るとLINEした。
今日部活が休みでよかった。
日誌を書き終えた頃には誰もいなくなった教室、黒板のほうへ歩いていく。
.
"持つで"
優しくしてくれる康二に久々に触れた気がして嬉しかったな。
「...」
何でこうなっちゃったんだろう。
そう思った瞬間、気を紛らそうと黒板を消し始めるけど手遅れだった。
泣いてしまった。
.
「...もうやめよう。こんな風に考えるの」
そう呟いてすぐ感じた人の気配。
蓮が教室に入って来て、消すのを手伝ってくれる。
.
「一緒に帰るぞ」
口調は優しい。
泣いていたことに何も触れてこず、でも腫れ物に触るようでもない蓮の優しさが心地よかった。
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作者名:キキララ | 作成日時:2021年9月19日 23時