すいかとみかんとママレード(黒×橙) (ページ25)

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今日は心なしか周りがソワソワしている気がする。

と思ったら、部屋のドアをノックする音が聞こえて開けると、

「よ、蓮くん」
「ラウールじゃん」

どうした？と聞くと、ラウールは顔の前に手を合わせて、

「今から一緒にお祭り行こ？
祭りというか、花火大会」

「え？」

ソワソワの正体は今日花火大会があるからか。

「正直、言っても俺受験生だし、時間的に花火は見れなくても仕方ないかなって思ってるの。でも、綿あめとかりんご飴とか買って食べ歩くだけでもしたくて！」

でも花火大会に絶対、

「お願い蓮くん！」

渋っているような俺の表情を読み取ったのか、ラウールは畳みかけてくる。

「お兄ちゃんは大学の友達と行っちゃったし、お姉ちゃんだって、」
「彼氏とだろ？」

純粋なラウールは俺が遮った意味に気付くことなく頷く。

「お願い！」

確かにラウールのことだから、必死に勉強してるんだろうな。
そんな中で気分転換のひとつもなけりゃ心配だし。

それに、会場は広いんだから、2人に遭遇する可能性なんて低いだろう。

「出る準備するぞ」

「ありがとう！」

ラウールは目を輝かせていた。

「ありがとう」
「お前の分奢るぐらいの余裕はあるよ」

ラウールとりんご飴を食べながら歩く。

綿あめや焼きそばも奢った。
無邪気なこいつと一緒にいたら、少しだけ気が紛れた気もした。

だけどまるで神様が嘲笑っているかのようにすぐ引き戻される。

「ねえ蓮くん」
「ん？」
「お姉ちゃんの彼氏さんってどんな人なの？」

「...すげーいい奴だよ。優しくて素直で」

誤魔化すことを覚えた俺とは正反対で。

「そうなんだ。蓮くんがそう言うなら間違いないね」

ホッとしている姉思いの弟の顔を見て心が痛む。

「今日誘った俺が言うのも何だけど、蓮くん好きな人とかいないの？」

「..いねえなあ。
ラウールはいんだろ？」
「えっ、いないって」
「嘘つけ、その話題出す奴はいるんだよ」
「いないって！てか俺に質問して逃げようとするのやめてよ」

珍しくラウールが恋の話に図星を指す。

「もし出来たら俺に話してね」
「恋愛赤ちゃんのお前には言わねーわ」
「何でよ！」

「俺にも色々あるんだよ」

俺はラウールの頭を軽く叩いて、わざと笑顔を見せた。