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「蓮くんも花火いいの?」
予定通り食べ歩きだけをしてラウールを家まで送り届けた時、俺にそう聞いてきた。
「毎年花火してる公園からがすげー綺麗に見えるから、会場じゃなくてそこで一人で見ることにするわ」
「そこ綺麗に見えるんだ!本当に花火スポットだね」
「だな。でも、家からも見えると思うよ」
「じゃあせっかくだしちょっとだけ見ようかな。
じゃあね蓮くん、今日一緒に来てくれてありがとう」
「うん、受験勉強頑張れよ」
「うん」
ラウールに手を振って別れ、俺は公園へと歩いていった。
夜だし相変わらず静まっている。
だけど、ベンチに腰掛けている人たちを見て凍りついた。
Aと康二。
後ろ姿だけど分かる。
公園には俺らしかいない。
3人と認識しているのは俺だけ。
そういや会場では会わなかったのに、ここで遭遇するなんて。
お互い浴衣を着て、またお互い笑い合っていて。
俺の入る隙なんてないことを見せつけられた気分で。
そして、花火が上がった瞬間、
2人の影が重なった。
花火なんて目に入らなかった。
漸く影が離れたと思ったら、Aは康二の肩に頭を預け、預けられた康二は頭を撫でた。
当然、公園を後にした俺。
Aとの思い出しかなかった公園で最悪の光景を見てしまって、家へと向かう自分の姿は哀れに思えた。
そんな俺と対照的に幸せの絶頂のAと康二、2人を祝福するかのように上がる花火。
世界中から、自分の気持ちを否定された気分だった。
でも、俺も分かんないんだよ。
何で好きになったんだろう。
A。
こんなに苦しいなんて、俺、何か悪いことでもしたのかな。
Aを好きなのが悪いことだと言うんなら、
諦める方法でも教えてよ。
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作者名:キキララ | 作成日時:2021年9月19日 23時