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「...阿部先輩」
先輩が私を呼ぶ時は、可愛いうさぎが跳ねたような効果音も一緒に聞こえる。
「どしたの？何かあった？」
「い、いえ！...あの、部長頑張ってください」
この場を繋げようと何とか言葉を放ったら、阿部先輩はきゃははと笑った。
「ありがとう。来年はAに引き継いでもらおっかなー」
「む、無理ですよ！しかもなったばっかじゃないですか先輩！」
「へへっ。だよね」
.
...ダメだ。
話していても、見ているだけでも、
先輩への好きが溢れていく。
.
聞きたい。
同じ気持ちですかって、聞きたい。
.
数日後。
部活が午後だった今日、友達と長話をしていたけど、彼女はこれから用事があるとかで先に帰っていった。
音楽室に1人になってもう帰ろうとした時、私のものではない水筒があるのを見つける。
運動部と同じぐらい水分が必要な部活だから、この忘れ物もよくあること。
でもそれより、置いておいていいのかな。
だけど誰のか分からないものを持つのも何だし...。
「はあ...あ、A」
「阿部先輩？」
走ってきた阿部先輩とは違う理由で急に鼓動が速くなる。
でもそんなことを知るわけもなく先輩は「あったー！」と叫びながらホッとしている。
「この水筒、先輩のだったんですか？」
「そう。門出ようとした時に気付いて」
良かった鍵閉められてなくて、と続けて笑う。
「Aはまだ帰んないの？」
.
...今。
今かもしれない。
２人きりになれるなんて。
「...先輩、」
「ん？」
「...好きです」
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作者名：キキララ
| 作成日時：2022年12月1日 17時
