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09. 夏合宿の夜 ページ10

「いったぁ…」


スパルタすぎる瞳子監督の特訓を乗り越え
兎にも角にも最終夜を迎えた私達

明日は特訓のまとめとしてチーム戦を行うらしい

今夜は海辺で花火やらバーベキューやら
レクリエーション的なイベントが待っているのだが
疲れた身体は一切動きそうにない

宿舎のテラスでストレッチを行っていた私は
妙に満たされた気分だった

個人練習ばかりの陸上とは異なり
チームやペアでの練習が必須のサッカー

独りだった私にはそれが刺激的なのかもしれない


「…んだよ、お前も居たのかよ」


振り返るとそこには
普段と変わらぬ様子の吉良が立っていた

何してんの、と尋ねる吉良


「見れば分かるでしよ。ストレッチだよ」


「おーまえ早々に音を上げてたもんな。俺様が手伝ってやるよ」


吉良はそう言って私の背後に立つと
両手で私の肩を押す

その力に遠慮も慈悲の欠片もない


「痛い痛い!もう少し優しく…」


「はっ!俺様に優しさなんてあるかよ!」


「この鬼畜ストライカーが」


「あ?ゴッドストライカーの間違いだろ」


軽口を叩き合いながらも
終わる頃には幾分身体が軽くなったようだ

そういえば、と口を開いた私に小首を傾げる吉良


「この後の花火、行くの?」


「んなもん興味ねえよ。部屋に戻って寝る」


「あんたねぇ、だから協調性が無いって言われんのよ。参加すればいいのに。基山辺りが構ってくれるでしょ」


「タツヤの世話にはなんねーよ。…お前は行くのかよ」


「まあ身体も動くようになったし、行くつもり」


「ふーん。花火、好きなのかよ」


欄干に身体を預けて浜辺を見下ろせば
花火の準備をする皆が手を振ってくる

早くおいで、とリュウちゃんの声が飛んできて
私は軽く手を挙げて返した


「そうだね、好きだよ」


花火が好きっていうより
皆と一緒に出来ることが好きなんだけど

そう付け加える前に吉良を見ると
その頬は僅かに赤く染まっていて

ちょっと拗ねたような顔をするものだから
調子が狂う


「…じゃ、俺も参加してやるかな」


「何でそんな上から目線なの」


「俺様がゴッドスト____」


「はいはい、分かったから。行くよ」


「…待て」



呼吸が止まった



吉良の逞しい腕が私を捕まえる

そして耳元で囁くのだった


「俺と賭けをしろ」


「賭け、って何」


「明日の試合で俺が勝ったら…」


そしてコイツは悪魔のように微笑むのだった


「俺の言うことを1つ聞け。言っとくけど、お前に拒否権はねえから」

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しろ(プロフ) - いづうさん» ありがとうございます嬉しいです……! (2019年2月25日 19時) (レス) id: ce9889e8a9 (このIDを非表示/違反報告)
いづう(プロフ) - 興味をそそる書き方にもう敬服しまくりです!!文面が洗練されてて読みやすかったです!つい一気に読んでしまいました…。ガンバレ夢主ちゃん!吉良を見返したれ! (2019年2月24日 22時) (レス) id: a4beff7793 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しろ | 作成日時:2019年2月20日 18時

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