スパイラル[後編]

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今夜ＰＶ撮影がある。
北山が不安を抱えていると藤ヶ谷はそれに気付き俺がそばにいるよと笑いかけた。
まず二階堂の誤解を解かなければいけない。藤ヶ谷自身が言って解決するとは思えないけど、北山だけを苦しめるのは嫌だった。
藤ヶ谷はすべてを二階堂に話そうと決心した。
すべては自分のせいだと。北山はそれを望んでないように思えるけど、藤ヶ谷なりのけじめをつけたかった。



「このまま仕事行く？それとも一回家に帰る？」



家…
当たり前に藤ヶ谷がいうそれは藤ヶ谷の家。だけど、藤ヶ谷の言葉がいかにも二人の家と言っているようで北山の心を擽る。




「このまま…シャワー浴びて行く」
「じゃあ、今日仕事夕方の撮影だけだから、スタジオに送ってくよ」
「あ、ありがとう」




藤ヶ谷の優しさが心にしみる。
北山が急いで浴室に行こうとすると、




「ちょっと待って、」



藤ヶ谷が呼び止め北山は足を止めて振り返った。




「ん？」
「ひとつ我が儘言っていい？」




なんだろうと、北山は藤ヶ谷を見つめる。
藤ヶ谷が我が儘を言うなんて初めてで。




「うん？」
「この部屋さ、今度一緒に模様替えしない？」




模様替え…
その言葉に北山ははっとした。
玉森と仲良くしている人なら誰でも分かる。
この部屋には玉森のものがありすぎている。
昨夜二階堂にも言われた通り。藤ヶ谷が気付かない訳もなかった。



それを掃除とか言わず、ソフトに模様替えと言う藤ヶ谷。そして、すべてを包みこんでくれてもヤキモチは妬いてくれていたんだと北山は分かり申し訳なく思いながらも笑いが零れてしまった。




「おう！次の予定があった時、なんなら今から模様替えする？」
「ばか。宏光は今から仕事だろ？」
「まぁな」




藤ヶ谷も北山がなんの躊躇もなく模様替えに賛成してくれたのを見て安心していた。

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