【V4L0】この世界の楽しみ方。

#31 ページ31

neth side


「俺ちょっと水買ってくるわぁ」
「はいよー、荷物見とく？」
「よろしく」

5月。

インターナショナルリーグもチャレンジャーズリーグもスプリットがひと段落し、
やってきたのはVCT Masters Tokyo

俺はteddyさんやOitanと観戦をしにきた。


と言っても俺たちも大会があるためZETAの初戦しか見れない。


キックオフリーグ。ZETAの初戦の相手はTECだった。


Aは第1マップで出場したものの、
それ以降、一度も試合に出ることも、顔を見せることもない。


Lazさんによると、第1マップ終了後のインターバル中に緊急搬送されたらしい。


TECはZETAに敗退し、その後もあまり結果を出せていない。

Aがかなりチームをキャリーしていたようで、
無勝と言うわけでもないが、明らかにTECの調子は悪いようだ。


昔馴染みがこの界隈で「強い」と称賛され、
「戻ってくれば」と求められていることはとても誇らしい。


だけど、俺はずっと重い気持ちを背負ったままだ。

引きずったままじゃだめだと思いつつも、
俺がまだ無名で、Ignisも存在してなくて、CSシリーズでもonlineの方で選手をしていた時から
なんだかんだで俺を応援してくれていた。

『nethは日本で1番スナイパーうまいよね』

『nethがいるからCSシリーズやってるとこあるわ〜』

彼女はAVAやOW、Fortniteなどもっと人気のあるタイトルでもかなり上手かったのに、
『自分はチームでやるべきじゃない』と言って、チームに所属せず、自由にやっていた。

仲間も絶対他タイトルの方が多くて、実績もある人たちがいたのに、
それでも俺と友達で居続けてくれた。


何度も折れかけた。そんな時にAも救ってくれた1人だ。


なのに、俺はAが助けを求める時に、いっつもいない。


おいわかるか？この気持ち。

引きずりたくなくとも、引きずっちゃうやろ！！！


「あ！待ってよ！！」

知らない女性が少し遠くで誰かを追いかけている。


『ゆーすけ待ってよ！』

よくそう言って俺のあとをついてくるAと重なる。


どうか無事でいて。

君にとって辛かったかもしれないこの世界から離れて、


もう苦しまないでいて。


俺の願いはもうそれだけや。

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