フラグ53 ページ14
近くの広場のベンチに落ち着いてからも、太宰さんは手を離さなかった。
それなのに二人ともそっぽを向いているから、周りの視線は僅かな心配が混じっている気がする。
触れた手は暖かい。
それがいじらしい。
「私には当たり前に思えるのだけど」
ふと、太宰さんの横顔が呟いた。
「犬は追いかけたら逃げるし、道路には車が通る」
飛び出すなんてもっての他だ、と眉間にしわを寄せる。
「だから君がとった行動が、私には不可解なのだよ」
君の努力も、その意志も、讃えられるべきものだ。
でも、危険やリスクを余りに顧みていない。
「はっきり言って異常だ」
きゅ、と握られた手を固くする。
異常という言葉が想定外に尖っていたからだ。
「どうしてそこまでするんだい?
何が君にそうさせるんだい?
...どうして、人を救えると信じるんだい?」
『!!それは...っ』
言いかけて、答えに窮した。
自分自身も、その明確な根拠を持っていない事に気付いたからだ。
厄介事の先にある幸福...それを求めていたけれど、どうしてそれを頑なに信じていたのかは自分でも分からない。
なんとなくそんな気がした、そうしたら不思議と力が湧いてくる。
なんとなくラーメンを食べたい、みたいなもやもやっとした動機。
『それは』
だから、いくら考えたってはっきりした答えは見つからないだろう。
『だって、それは』
時には考えても分からない事だってある。
でも、私の気持ちは嘘じゃない。
『そうあるべきものだから』
理屈とか、根拠じゃない。
誰かを助けたい、心からそう思った私は確かにいたんだ。
顔を上げると、太宰さんが白い歯を覗かせてにやりと笑んでいた。
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花岳(プロフ) - チョコレヰトさん» ひゃーー!お褒め頂き光栄です......!ありがとうございます。相変わらずだらだら更新していくと思いますが必ずや完結させてみせますので!応援よろしくお願いします! (2019年2月11日 11時) (レス) id: 95c5868039 (このIDを非表示/違反報告)
チョコレヰト - おおお…面白いですね!ギャグ一直線って言うわけでもなく、かと言って重すぎるシリアスも無く…!!丁度良くて、見つけて一気読みしてしまいました…w応援してます!更新頑張ってください!いつまででも待ってます! (2019年1月27日 22時) (レス) id: 9bf0bfde55 (このIDを非表示/違反報告)
花岳(プロフ) - 結愛さん» 素敵なほのぼの文芸部だったんですね...こちらはガチガチ文芸部です...〆切前は常に修羅場で、よく悲鳴があがってます。それはそれで楽しいんですけどね!他校の部活の様子を聞けて嬉しいです!コメントありがとうございました!! (2018年9月19日 1時) (レス) id: 95c5868039 (このIDを非表示/違反報告)
結愛(プロフ) - 私も文芸部だったのですが、私の居た文芸部とは違うのですね…。(私の居た文芸部では皆好きなようにお絵描きしてました) (2018年9月17日 13時) (レス) id: 4e4bc357c1 (このIDを非表示/違反報告)
花岳(プロフ) - 紅夏さん» ありがとうございます!!!!もう、ほんとにありがとうございます。待ってる、と言って頂けるだけで頑張れます。絶対書き上げますので、待ってて下さい!、 (2018年9月17日 11時) (レス) id: 95c5868039 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花岳 | 作成日時:2018年1月10日 23時