フラグ74 ページ35
――――数日前。
「お待たせしました」
「いいえ、時間通りです。さすが国木田さんですね」
男は腕時計をちらりと見る。秒針がちょうど真上に来ていた。
男――坂口安吾は国木田を自分の隣の席へ招いた。
ここは横浜のとある喫茶店。
壮年の店主が一人で経営しているようだった。国木田が見た限りでは彼以外に店員が見当たらない。小さな店だとそんなものだろうか。
ラジオが流れている。
そういえば客もいない。国木田と坂口で貸し切り状態だ。
「コーヒーで良いですか」
「はい」
坂口は馴れた様子で注文した。店主も同様だ。
「ここは特務科お抱えの店ですから。安心してください」
国木田の観察の目に気づいて、坂口は言った。
「市井の情報を得る一つの手段です」
すると店主もこちらを見て微笑んだ。
「どのような用件でしょう」
「小花衣Aについてです」
国木田がおしぼりを手に取るより先に坂口は答えた。
互いに目を合わせない。
国木田は静かに手を拭いた。皮膚を湿らす冷たさが心を引き締める。
流石は特務科といったところだ。
わずか事件の次の日にその全容を把握し、行動を始めた。探偵社と同等か、それ以上の情報をこの短時間で集めているだろう。
「探偵社は彼女を保護していますね?」
「はい」
こと、と目の前にコーヒーが置かれた。砂糖とミルクを断って、一口啜る。坂口はまだ話さない。もう一口啜る。
坂口は赤い液体――おそらくトマトジュースを飲んで、告げた。
「我々は、彼女を一級危険異能者として手配しました」
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花岳(プロフ) - チョコレヰトさん» ひゃーー!お褒め頂き光栄です......!ありがとうございます。相変わらずだらだら更新していくと思いますが必ずや完結させてみせますので!応援よろしくお願いします! (2019年2月11日 11時) (レス) id: 95c5868039 (このIDを非表示/違反報告)
チョコレヰト - おおお…面白いですね!ギャグ一直線って言うわけでもなく、かと言って重すぎるシリアスも無く…!!丁度良くて、見つけて一気読みしてしまいました…w応援してます!更新頑張ってください!いつまででも待ってます! (2019年1月27日 22時) (レス) id: 9bf0bfde55 (このIDを非表示/違反報告)
花岳(プロフ) - 結愛さん» 素敵なほのぼの文芸部だったんですね...こちらはガチガチ文芸部です...〆切前は常に修羅場で、よく悲鳴があがってます。それはそれで楽しいんですけどね!他校の部活の様子を聞けて嬉しいです!コメントありがとうございました!! (2018年9月19日 1時) (レス) id: 95c5868039 (このIDを非表示/違反報告)
結愛(プロフ) - 私も文芸部だったのですが、私の居た文芸部とは違うのですね…。(私の居た文芸部では皆好きなようにお絵描きしてました) (2018年9月17日 13時) (レス) id: 4e4bc357c1 (このIDを非表示/違反報告)
花岳(プロフ) - 紅夏さん» ありがとうございます!!!!もう、ほんとにありがとうございます。待ってる、と言って頂けるだけで頑張れます。絶対書き上げますので、待ってて下さい!、 (2018年9月17日 11時) (レス) id: 95c5868039 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花岳 | 作成日時:2018年1月10日 23時