14.遠い ページ14
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「2組のAAちゃんってさ、なんかいいよね」
全てはそう言ったのが始まりだった。
パッと見た感じは普通の、ちょっと前に他所から転校してきた子。
とびきり美人ってわけでもなく、
ずば抜けて目立つ存在ってわけでもない。
ただその髪は柔らかそうだなって。
持っている雰囲気がなんかいいなってくらいの悠々としたものだった。
「見てみ角名。バスん中で爆睡しとるAちゃん」
そう言って侑が見せてきたスマホ。
そこには白マスク姿で鞄を胸元で抱きしめながら、
ぐっすりと眠る彼女の写真。
いやなに盗撮してんのって話だけど、
この時その写真にとんでもなく心を奪われてしまって。
「え、すっごい可愛いんだけど」
頭の中が彼女の事でいっぱいになった。
ただ一つ想定外だったのは、それを侑がAちゃんにチクったこと。
「Aちゃんにお前のこと伝えといたで」
「は？」
え、いや何してくれてんの。
ほんと考えナシというか無鉄砲というか。
やってくれたなと溜め息をついて頭を抱えた。
そのせいなのか、
目が合っても「うわっ」て顔して逸らされたし。
会ってもすっごい嫌そうな顔されたし。
話すときは変に距離を取られた。
(あ、あとなんか怖がられてる気がする。)
侑は妙にAちゃんに懐いてて。
銀は向こうが心開いてるからか微妙に距離が近い。
唯一、治はいつもご飯の話しかしないから安心してたのに、
「Aがくれた」
結局は片割れと同じで彼女に懐いていた。
そういえば前に『Aはメシの話で気ぃ合うねんな』って
えらく嬉しそうに話してた気がする。
あれ？そうなると俺だけじゃん、遠いの。
幸せそうな顔しておにぎりを咀嚼する治を見つめた。
……なんか、嫌だな。
そう思ってからは行動が早くて。
その日の午後。
ちょうど廊下を歩いてきたAちゃんの前に立ち塞がって、
驚いた顔でこちらを見上げる彼女に告げた。
「お出掛けしよ、Aちゃん」
と。
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作者名：. | 作成日時：2020年1月29日 23時
