花散る前に雪よ舞え【太宰治】

28.筋違 ページ29

敦said








「あの、最近Aちゃん、変じゃないですか？」







「うーん、確かに変だけど…
正常範囲以内じゃないかな」






僕は谷崎くんにそう云った






正常範囲以内…なのか？




今日の朝だって



事務机に座り、何かブツブツと呟いていると思ったら



シャーペンをカチカチさせて





好き、嫌い、好き、嫌い
と連呼していた






何処から仕入れた占いなのか






シャーペンの芯を全て出し終えると




「…嫌い…」




彼女はどよーんと机に倒れ込んでいた









「敦くんが此処にくる前はもっと酷かったから」







谷崎くんは苦笑した







「そうなんですか？」








「うん
同居に慣れなくて家に帰らない日もあったよ」







「ええ！」




でも、如何してだろう



最近は探偵社も忙しくて皆何かと焦っている





だからなのかは判らないけど




Aちゃんは何時にも増して資料に誤字脱字が多くて国木田さんに多々怒られてるし




応接もぼっーとして聴き逃すことも多くなった








「Aちゃん」




僕はAちゃんに声をかけた





「え？！…あ、敦くんか…如何かした？
あ、そうか資料、だよね
ちょっと待ってて、今取り掛かろうとして」








「なんか最近、悩んでる？」









「え？」





するとすぐに顔を真っ赤にしたAちゃん







「な、何にも無いよ？！
特に、何時も通り！」









「そっか…」






図星だったみたいだけど



無理矢理聞かない方がいいのかな







「最近のAちゃん、なんか変だと思わない？
聞いたんだけど、教えてくれなくて」





僕はこういう事に詳しそうなナオミさんに聞いてみた




「ふふ…敦さんは甘いですわね
あれは、どう見ても恋煩いですわ」







恋煩い？！






「如何して…？！」








「見ればわかりますわ
ナオミも今から本人に聞きだそうと思ってましたの」







ナオミさんはすごい笑顔







「あーんなことやこーんなことを
…敦さんも来ますか？」









「…ううん、遠慮しとくよ」







なんか踏み入ってはいけない領域に入ってしまいそう

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