063:マリーゴールド ページ18
『コナンくん』
Aさんが顔を上げた。
『なんで降谷さんと付き合わないのかって聞いたっけ』
Aさんの視線が俺を射抜く。
その瞳にはただただ自責の念だけが渦巻いていて。
『そんなことできるわけないじゃない。
あの人からなによりも大切な幼馴染を奪ったのは私なのに』
──それが、Aさんの“理由”だ。
この二人は、お互いが相手の罪を許しているのに、お互いが自分の罪を赦していない。
例え相手がどれだけ優しい言葉をくれたとしても、彼らは自分が犯した罪を一生許すことはない。
それどころか、相手が自分を責めない分、より強く自分自身を責め立てる。
その罪悪感を抱えたまま、自分が抱き続けていた淡い恋心を叶える気なんて持てるはずもなくて。
『面倒だって思うでしょう。
本当にそうなのよね。お互いに逃げ出して、それなのにまだ一緒にいる』
彼女は微笑んで、そしていつか安室さんがポアロで言っていたことと同じ言葉を口にした。
『──でも、それももう終わるから』
「え…?」
『組織壊滅作戦、進んでるんでしょ?』
そう問われておずおすと頷いた。
確かにそうだ。奴らをぶっ叩く準備は今、着実に進められている。
近いうちに決行されることも決まっている。
でも、それとAさんたちになにが関係してるんだ…?
『私が降谷さんの協力者でいるのは、組織が壊滅するまでって決めてるの』
「…え、それじゃあ…!」
俺の声に、彼女は目を伏せて首を縦に振った。
『…うん、組織が壊滅したら全部終わりにする。
もう降谷さんとも会わない。
ずっと先延ばしにしてた問題にいい加減ケリを付ける。
…今度こそ、私は公安から手を引く』
彼女の耳元で、アクアマリンの雫がシャナリと鳴いた。
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びびか(プロフ) - この作品の作り込みが凄すぎて本当に好きです。。素敵な作品に出会えて良かったです!ありがとうございました! (2023年3月27日 20時) (レス) @page32 id: b527a1d6e3 (このIDを非表示/違反報告)
わか - 想像するだけでこっちが照れてくる (2021年12月7日 15時) (レス) @page30 id: 9e519c38d5 (このIDを非表示/違反報告)
よる - ほぉ…これが降谷さんとの至高の領域だな???ちょっと最上級の語彙力調達してきますね?手持ちの語彙じゃこの素晴らしさは語れないので!!!! (2021年4月30日 23時) (レス) id: 6e0ab3a00d (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - あむむさん» 完結してからしばらく経ってるのに見つけてくれてありがとうございます…!!そんなに褒めて頂けるなんて嬉しすぎて私の心臓が取れます…!25機も消失してご無事ですか!?笑 最後まで読んで下さりありがとうございました!! (2018年11月9日 17時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
あむむ - 初めまして。どうにもこうにも我慢出来なくてコメント失礼します!泣きましたキュンキュンしました心臓取れました辛すぎましたその文章力に脱帽しました!25機くらいは消滅しました…!完結おめでとうございます。お疲れ様でした! (2018年11月8日 21時) (レス) id: eaf01be664 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年9月21日 21時