＊*150 ページ11
.
｢廉、Aちゃん｣
誠さんは私と廉くんを見つめてゆっくり口を開いた。
｢世間体なんてどれほど無意味なものか
一度過ちを犯した私たちが一番よく分かっている｣
誠さんの顔から笑顔が消えて真剣なものになった。
｢君たちは真剣に想いあっているかい？｣
鋭い瞳に見つめられて
けれど私は少しも怯まなかった。
それは廉くんも同じ。
｢はい｣
｢はいっ…｣
2人ともほぼ同時に返事をする。
誠さんは私たちの返答を聞いて再び笑顔を浮かべた。
｢だったらその気持ちを大事にしなさい。
周りから何を言われたって
他人にどうこう思われる辛さよりも
大切な人がいる幸福の方が何倍も勝つんだからね｣
誠さんの言葉が胸に深く刻まれる。
｢父さん…｣
｢ぅ〜っ、よ、よかった…っ｣
私は安堵から力が抜けてしまって
涙をポロポロと流してしまう。
こんなにあっさり認めてもらえると
思ってなかったから、本当によかったっ…。
｢ふふっ、Aったら。
でもそうね、2人が付き合うってことは
いずれ私たちは本当にお父さんとお母さんに
なるわけだから、ちゃんと呼べるように練習
しなきゃいけないわよ｣
｢そうだね。なんだか不思議な感じだなぁ。
まあ、廉がAちゃんを好きなことは
前々から気づいてたけどね｣
｢…は？｣
｢父親の目をあざむけると思ったか？
女の子とは口もきなかいお前が
あんな優しい顔で接するんだから…
すぐに分かったよ｣
｢…っ、くそ｣
さっきの真面目な雰囲気はどこへやら、
すっかりいつもの雰囲気に戻った私たち四人家族。
｢ふふっ、今日はお祝いね。
廉くん、A好きな物を言いなさい。
今日は外食よ！｣
｢…Aのご飯が一番美味しいです｣
｢まあ、熱々ね〜｣
｢そう言わずに。
今日くらいAちゃんも家事を休んで、さ行こう｣
大好きな3人と
とても幸せな雰囲気に包まれ
私はだらしない顔で笑った。
次の日、色んな緊張から解き放たれた私が
高熱を出して寝込んでしまったのはまた別のお話。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1614人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「永瀬廉」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なっちゃん
| 作成日時：2020年8月14日 21時
