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lesson 36 ページ37

「A、あのさ…俺は……」


零ちゃんの声は耳には入ってるけど、どうしても顔が上げられない。

そんな私に、零ちゃんは言葉を止める。

離された零ちゃんの手が頬に触れた。


「こっち見てよ」

『……っ』


懇願するような声に、奥歯を噛み締めた。

頬に添えられた手をやんわりと退ける。いま。渡さなきゃ。



『零ちゃん』

「……なに?」

『零ちゃんにね、預かってるものがあるの』


ポケットに手を入れる。

俯いたまま、それを差し出した。

もう何回も眺めて、何日も持ち続けた私のものじゃない手紙。


零ちゃんはそれをじっと見つめて、受け取らずに困惑気味に私を見る。

その視線に、固めたはずの何かが崩れそうになった。

小さく息を吸って、吐き出す。

しっかりしてよ、私はただの幼馴染なんだから。

ちゃんと幼馴染らしく、普通に振る舞わなきゃ。



『隣のクラスのすごく可愛い子からだよ』


零ちゃんが握った手に力を込めるのが見えた。

沈黙が続く。

部屋に響く時計の針の音が嫌に大きくゆっくり聞こえた。

重い空気に窒息してしまいそうになった時、やっと零ちゃんが口を開いた。



「……Aは、俺がこの子と付き合ってもなんとも思わない?」

『…なんでそんなこと聞くの?零ちゃんの好きにすればいいじゃん』

「………わかった」


ようやく零ちゃんが手紙を受け取る。

ただの紙を手放しただけなのに、随分重いものが手から離れた気がした。

膝にうまく力が入らないが、なんとか耐える。


なんとも思わないわけないじゃん。

だけどそんな、私なんかの気持ちを押し通して、零ちゃんの恋路を邪魔できないもん。

小さい頃からずっと隣にいた。

どんな時でも、零ちゃんがそばにいてくれた。

そんな零ちゃんが急に誰かのところに行っちゃったら、ほんとはすごくすごく寂しいけれど、でも私はただの幼馴染なんだから。

私なんかが介入する余地なんて、ないんだから。



零ちゃんは手紙を持ったまま、ドアへ向かう。

…帰るのかな、零ちゃんの用事がなんだったのか聞いてないけど…

そうは思ったものの、なにも言わずに彼の背中を眺める。

しかしドアノブに触れる直前、零ちゃんがピタリと動きを止めた。

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設定タグ:名探偵コナン , 降谷零 , 安室透   
作品ジャンル:恋愛
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ふゆーれい(プロフ) - に、ニヤニヤが全くとまりませんでした…。あと隣の子から預かってた手紙を零に渡す所が何か辛かった()面白かったです!今更ですが、完結おめでとうございます! (2022年7月25日 22時) (レス) @page42 id: 5fc4c4d6bd (このIDを非表示/違反報告)
はろーきてぃ様。 - めっちゃ面白かったです!!さいこおお!がんばれえええ! (2022年5月27日 23時) (レス) @page42 id: 278a10c8d3 (このIDを非表示/違反報告)
よる - 告白しようとした美少女の性格が好きすぎる…めっちゃカッコいいから振られたとしても堂々としてそうだなぁ (2021年4月17日 13時) (レス) id: 6e0ab3a00d (このIDを非表示/違反報告)
mami - 完結お疲れ様です!凄く面白かったです! (2019年8月5日 5時) (レス) id: 3ba7cafabb (このIDを非表示/違反報告)
盛りそば。 - なにこれ……萌しかないじゃないですか…尊死(( (2019年7月21日 15時) (レス) id: 2b295a992e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:立夏 | 作成日時:2018年6月15日 21時

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