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lesson 37 ページ38

『…零ちゃん?』


零ちゃんが動かなくなって少し経ち、流石に後ろから声をかける。

そして次の瞬間だった。


急に零ちゃんが踵を返して、私の手を強く引いた。

深くなった青い瞳が見えたと思ったら、ガツンと歯が当たった。

キスされていると気づくのに、数秒かかった。


『ちょ…!んぅ…っ!』

「……っ、は」


逃げようと思っても、気づいたら壁に追いやられてて逃げられない。

今までのどんなキスよりも乱暴で、激しくて、頭が回らない。

目を開ければ、零ちゃんの余裕なさげな瞳に泣きそうな私が映った。


あんなに好きだったキスも、今はちっとも嬉しくない。

だって、これも全部、練習なんでしょ…?

零ちゃんは私のことなんて好きじゃない。

気持ちの入ってないキスなんて、虚しくなるだけじゃない…!

零ちゃんが将来誰かとキスするためにするなんて、そんなの…!



『…っやめてよ!』


ドンッと強く零ちゃんを突き飛ばした。

零ちゃんが少し離れる。

肩で息をしながら、涙が落ちるのを堪えながら、零ちゃんを見る。

眉の下げられた大きな瞳と目が合った。



『零ちゃんは、なんで彼女作らないの?』

「…なんでって、」

『いつも告白されてるし、すぐ作れるでしょ?
キスだって、私みたいなただの幼馴染とじゃなくて、その子とすればいいじゃない!』


そう言った瞬間、涙が溢れて零れ落ちてしまった。

零ちゃんがハッとしてまた距離を詰めてくる。


「そうじゃなくて、俺は…!」

『零ちゃんは、私のことなんて好きじゃないくせに…っ!』

「…え?」


もう自分でも何を言ってるのかわからない。

それでも涙も言葉も、溢れてしまって止まらない。



『もうやだよ!
ずっと練習台でいるなんて、そんなのしたくない!
私は零ちゃんとしかキスしたくないけど、零ちゃんが私を好きじゃないなら意味ないの!』

「A…?」


徐々に見開かれる瞳に気付かずに、ボタボタ涙を零しながら言う。


『私ばっかり零ちゃんのこと好きなままキスなんて、出来るわけ…っ』


続く言葉は、零ちゃんに食べられた。

さっきとは比べ物にならないくらい、優しいキス。

思考が止まる。頭が真っ白になる。

体に入っていた力が、少しずつ抜ける。


やがて零ちゃんは唇を離し、指を絡めてきた。

抵抗なんて、もうできるはずもなくて。

彼は私の目を見て、はっきりと口にした。



「好きだよ」

『……え?』


まっすぐすぎる碧が、私に刺さる。


「Aが好きだ」

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設定タグ:名探偵コナン , 降谷零 , 安室透   
作品ジャンル:恋愛
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ふゆーれい(プロフ) - に、ニヤニヤが全くとまりませんでした…。あと隣の子から預かってた手紙を零に渡す所が何か辛かった()面白かったです!今更ですが、完結おめでとうございます! (2022年7月25日 22時) (レス) @page42 id: 5fc4c4d6bd (このIDを非表示/違反報告)
はろーきてぃ様。 - めっちゃ面白かったです!!さいこおお!がんばれえええ! (2022年5月27日 23時) (レス) @page42 id: 278a10c8d3 (このIDを非表示/違反報告)
よる - 告白しようとした美少女の性格が好きすぎる…めっちゃカッコいいから振られたとしても堂々としてそうだなぁ (2021年4月17日 13時) (レス) id: 6e0ab3a00d (このIDを非表示/違反報告)
mami - 完結お疲れ様です!凄く面白かったです! (2019年8月5日 5時) (レス) id: 3ba7cafabb (このIDを非表示/違反報告)
盛りそば。 - なにこれ……萌しかないじゃないですか…尊死(( (2019年7月21日 15時) (レス) id: 2b295a992e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:立夏 | 作成日時:2018年6月15日 21時

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