lesson 35 ページ36
零ちゃんの部屋と私の部屋はベランダ伝いに移動できるくらい近い。
だからカーテンを開けている限り、部屋の中だって丸見え。
だけど、しばらく私はカーテンを開けずにいる。
理由は…まぁ…お察しの通り。
窓の鍵を開けてる限り、勝手にお互いの部屋に入ることだって出来てしまう。
でも最近はずっと鍵は閉めてる。
これも理由は同じ。
だから、その日家に帰って、部屋に入った時はめちゃくちゃびっくりしたのだ。
「おかえり」
『うわぁ!?』
零ちゃんが部屋の中にいた。
こんなことは今までも時々あったけど、今回は流石にびっくりした。
だって10日もまともに喋ってなかったんだもん。
気まずくてずっと避けてて、零ちゃんから声をかけられることもあんまりなかったのに、いきなり部屋にいるんだもん。
『ど、どこから入ったの?』
「普通に玄関から。おばさんが入れてくれた」
『そ、そう…』
そりゃそうだ。考えてみればそれしかない。
むしろ普通窓から入ってくる方がおかしいだろう。
零ちゃんを盗み見ながら鞄を下ろす。
怒っては…なさそう、かな…?
鞄から手紙を抜き取ってポケットに入れた。
渡さなきゃ。
渡すって決めた。
零ちゃんがなにをしにここへ来たかはわからないけど、タイミングを見計らってちゃんと渡そう。
女の子の言葉が頭をグルグル回る。
そんな時だった。
零ちゃんが目の前に来て、私の手を握った。
「A」
それだけで、心臓が跳ねた。
随分久しぶりに目が合う。
アクアマリンみたいな瞳が、前にも増して綺麗に見えた。
言葉に詰まる。
顔が熱くなる。
鼓動が早くなる。
一言、名前を呼ばれただけなのに。
慌てて目を逸らした。
…わかってる。
本当はずっと、わかってた。
あの子の言う通りだ。
目を瞑って、気づいてない振りをして。
零ちゃんに甘えて、耳を塞いで逃げた。
私は零ちゃんが好き。
ずっとずっと、零ちゃんは私の中で特別で、1番で、大好きで。
それは幼馴染としてだったのに、いつの間にかそうじゃなくなっていた。
キスだって、零ちゃんだから、零ちゃんが好きだから引き受けた。
…だけど、やっと認めて、やっと自覚して、今更どうすればいいの。
零ちゃんにとって私はただの幼馴染。
人の恋路を勝手に邪魔する権利なんて、あるはずもないのに。
顔が見れなくて俯く。
いつまで経っても零ちゃんから離れられないままじゃ、きっとダメなんだ。
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ふゆーれい(プロフ) - に、ニヤニヤが全くとまりませんでした…。あと隣の子から預かってた手紙を零に渡す所が何か辛かった()面白かったです!今更ですが、完結おめでとうございます! (2022年7月25日 22時) (レス) @page42 id: 5fc4c4d6bd (このIDを非表示/違反報告)
はろーきてぃ様。 - めっちゃ面白かったです!!さいこおお!がんばれえええ! (2022年5月27日 23時) (レス) @page42 id: 278a10c8d3 (このIDを非表示/違反報告)
よる - 告白しようとした美少女の性格が好きすぎる…めっちゃカッコいいから振られたとしても堂々としてそうだなぁ (2021年4月17日 13時) (レス) id: 6e0ab3a00d (このIDを非表示/違反報告)
mami - 完結お疲れ様です!凄く面白かったです! (2019年8月5日 5時) (レス) id: 3ba7cafabb (このIDを非表示/違反報告)
盛りそば。 - なにこれ……萌しかないじゃないですか…尊死(( (2019年7月21日 15時) (レス) id: 2b295a992e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年6月15日 21時