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2話 ページ3

『それより降谷さん』

残っていたアイスコーヒーを一気に飲み込んで、Aは言う。



『お盆あたりってお休みありませんか?』

「お盆?あー…取ろうと思えば1日くらい取れると思うけど」


Aの扱いは色々特殊で、大体俺についてくるから俺が非番の時はAも非番。

休みの日が被ってるのはなにかとありがたい。

俺の言葉に、Aは嬉しそうに身を乗り出す。



『ほんとですか!?ちょっと行きたいとこあって』

「へぇ、どこだ?」


聞けば、彼女は何故かそこでうっと言葉に詰まった。

そして言いにくそうに、黒く染め直した髪をいじる。


『えーっと…、その…』

「なんだよ」

『い、いや…無理ならいいんですけど……』

「はぁ?いいよ、言うだけ言ってみろ」


そう言ったのに、Aはしばらくいじいじと唸り続ける。

そこまで言いにくいとこなのかよ。

早くしろ、と軽く睨んだところで、ようやく観念したように口を開いた。



『お父さんとお母さんのお墓参りに行きたくて…』


「……あぁ」


…なるほどな。そういうことか。


Aの両親は、どちらも既に亡くなっている。

組織の仕業とかそういうことではなく、二人とも病気でだったらしい。

自分の知らないうちに親が息を引き取っていたことは余程堪えたようで、伝えた日は随分落ち込んでいた。

しかし周りが心配しまくってあわあわ世話を焼いてるうちにすぐに元通りに戻った。

とはいえ、やはりずっと気にしていたらしい。


そりゃそうだよな…

死んだことになっている人間が故郷に近づくのは御法度。

だとしても、墓参りくらいなら…



「………わかった」


少し間を空けてからの返事に、Aが弾かれたように顔を上げた。

その瞳は驚きに染まっている。
まさか許可が出るとは思っていなかったようだ。


『いいんですか…?』

「万が一誰かに鉢合わせしてもバレないようにしろよ」

『…っはい!ありがとうございます!』


角度のおかしい敬礼。…これもいい加減やめさせないと。

また墓の場所を調べとかないといけないな。

Aの実家遠いんだよなぁ。長いドライブになりそうだ。

まぁでも、それもまたいいかもしれない。


アイスコーヒーが少し残った自分のコップの中で、溶けた氷がカランと音を立てた。

3話→←1話 ▽コバルトブルーの憂鬱



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設定タグ:名探偵コナン , 降谷零 , 安室透   
作品ジャンル:恋愛
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立夏(プロフ) - 利茄さん» ありがとうございます! (2020年4月23日 0時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
利茄 - 面白い! 青井と犬子は、吹きましたww もう、最高ぉーーーー! もし、よかったら、私のも、読んで 下さい! (まだ、完成してないけど) www (2020年4月22日 0時) (レス) id: 1a3e36626c (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - りーぬ@天使が尊いさん» ありがとうございます!!犬井犬子のくだりの時はたまたまポアロの近くを歩いてただけなので行ってないですよ〜! (2020年4月8日 20時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
りーぬ@天使が尊い(プロフ) - すっっっっっっっごくおもしろかったです!!!!!31話で主人公ちゃんがポアロに行ったことないって言ってるんですけど犬井犬子のくだりのときに行ってませんでしたっけ??思違いならすみません(((^^;) (2020年4月8日 16時) (レス) id: 181f09b6df (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 立冬さん» お前wwwwありがとうございます!!!ww (2019年2月6日 17時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:立夏 | 作成日時:2018年8月8日 22時

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