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52話 ページ9

「すごいね、公安警察は。いつ気づいたの?」

『…恥ずかしいことに気づいたのはついさっきよ。あなたが私を攫ったときね』


逸る心を落ち着かせながら身構える。

大丈夫。伊織くん1人だ。



『あなたと再会したパーティーの日、取引なんてどこにもなかった。
でもそれは情報が間違ってたんじゃないわ。

予定されていたのに、やめたのよ。
警察である私を見て』


伊織くんは何も言わない。



『あなたはあの時、今何してるの?って聞いたわね。
でもさっき父親に確認したわ。

あなたは父から、私の職業を聞いていた。
あの時既に、私が警察官であることはわかってたはずよ』


だから取引は中止にした。

警察が張り込んでることを知って。



『それにキャバクラの時。
標的は黒幕と電話で話して、私が公安だと知った。
私の正体を知っていて、かつ手下に尾行させてたあなたならそれも可能でしょう』


「…ふふ、そうだね。当たりだよ」

『……っ』


こんな時にも彼はおかしそうにクスクス笑う。

その姿にゾッとして、少し怯んだ。

ダメだ。呑まれるな。しっかりしろ!



「それで?僕をどうするんだい?」

『逮捕するわよ。当たり前でしょ。
さっき上司に証拠を送ったから、もうすぐ公安が来るはずよ』

「へえ、そっか…僕もここまでかぁ…」

『………あなた、なんで笑ってるの』



この笑顔が虚勢じゃないことくらいわかる。

間違いなく心から今の状況を楽しんでる。

狂ってる。

狂気に当てられて足がすくむ。

ゆっくりと伊織くんが顔を上げる。



「ねぇ、Aちゃん」

『…なによ』

「僕、ちゃんと言ったよね」



───Aちゃんが手に入らないくらいなら殺してしまった方がいいって。



その言葉が聞こえた直後、彼の手の中でキラリとナイフが光った。


一瞬で体に力を込めた。

大丈夫。これくらいよけれる。

しかし1歩後ずさった瞬間、ガクッと体のバランスが崩れた。


『……っ!?』


まずい…!ヒールが折れた…!!

体勢を立て直す暇はない。

迫ってくるナイフに、それでも急所は外そうと体をねじる。

来る痛みを覚悟して眉を寄せた次の瞬間だった。



バキッと嫌な音がして目の前の伊織くんがいきなり吹っ飛んだ。



「──あげないですよ」



大好きな声が。

聞きたかった声が。

すぐ近くで響く。


零は、少し息を整えて、いつものように前髪を掻き上げて言った。


「こいつ、俺のなんで」

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設定タグ:名探偵コナン , 降谷零 , 安室透   
作品ジャンル:恋愛
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ひなた(プロフ) - 読ませていただきました!初めてゴリラを好きになれた作品なので感謝しております!そして、少し気になったのが、「緑川」というキャラでおそらく諸伏くんの声優さんと名前がごっちゃになってしまい諸伏くんを緑川と書いたものだと思いますがそこが少し気になりました。 (2022年4月30日 21時) (レス) id: dd9bdc737b (このIDを非表示/違反報告)
りーくん - 待って最後の宣伝のやつ二つとも知ってんだけどwwww (2021年9月1日 21時) (レス) id: 6d65fc1765 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 椎名桃乃さん» わー!ありがとうございます…!そんなそんなもったいないお言葉ばかりですがとっても嬉しいです!見つけてくださってありがとうございました!どうぞお暇潰しにでもゆるりと読んで頂けたらと思います!笑 ありがとうございました! (2019年5月26日 18時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
椎名桃乃 - 狂犬ちゃんを読んでぼろっぼろに泣いて、それから此方の作品を見付けて、いい話だなーとほっこりさせて頂きました!立夏さんは文才力が半端ないですね…!他の作品も読んでみたいと思います! (2019年5月24日 21時) (レス) id: 87ecca1cfc (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - ウィンディ-lilac-さん» わぁぁありがとうございます!!とっくに完結した作品なのに見つけて下さって感謝しかありません…!本作は初めて書いた降谷夢なのでとても嬉しいです!狂犬の方まで本当にありがとうございます!これからもいっぱい文字書きますね!! (2018年8月27日 20時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:立夏 | 作成日時:2018年6月10日 21時

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