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65話 ページ22

『……お別れパーティーですか?』

目の前に並ぶ豪華絢爛たる料理たちに思わずそんな言葉が飛び出た。


「か、考え事してたらつい作りすぎて…」


零はそう言いながら少し目をそらす。

疲れてるだろうし座ってていいよと言われ、うとうとして待っていたら気づけばこの状態。

明らかに2人では食べきれない量。

うわ…でもどれもこれもめちゃくちゃ美味しそう…

作ってくれたということが素直に嬉しくて、ふふと笑いを漏らした。


『ありがとう零!いただきます』

「ん」


手を合わせてお箸を手に取る。

ほんとに美味しそう…

ちょっと迷ってからまずはサーモンマリネを口に運んだ。


その瞬間、ほどよい酸味が口の中に広がる。

シャキシャキの玉ねぎがサーモンと絶妙にマッチしていた。



『え〜!やばいめっちゃ美味しい!さすが零!あとで作り方教えて!?』

「あはは、やっぱりAはいつになっても変わんないな」


同じものを食べながら零はそう言って笑う。

なんのことだと首を傾げれば、彼は懐かしむように少し目を細めた。



「ほら、初めて料理対決した時も同じこと言ってきたから」

『あー…ガトーショコラの時?』


そういえば言ったような気がせんでもない。

プライド高いのか低いのかわかんないって松田に言われたっけ。


思い出しながらクスリと笑う。

そしてハタと気づいた。


零とこうして昔の話をするのはいつぶりだろう。

いつの間にかあの日々のことは禁句になっていて、お互い口にすることはなかった。

もうそんなことはなくなったんだ。

その事実がじわりと心に広がる。



それからもしばらく警察学校での思い出話に花を咲かせた。

ずっと蓋をしてしまい込んでいた記憶を一つ一つ紐解く。


ああ、私はこんなにもキラキラした宝物たちをずっと抑え込んでたのか。

これからは少しずつでも、時折あいつらのことを思い出そうと心に決めた。



そうしてご飯を食べ終わり、私は改めてキャリーケースを持ち上げる。

同居生活はなかなかに楽しくて心が満たされたから残念だなぁとも思いながら。


「…送ってくよ」

『ほんと?ありがと、助かる』


言いながら車のキーを握った零は、ウロウロと目を泳がせた。

なにか言いたいことでもあるのかと視線をやる。

すると零は、長い沈黙のあとに小さな声で零した。



「………よ、寄り道でもシマセンカ」

『なんで片言?』


ふは、と笑いつつ、意図がわからないままいいよと頷いた。

66話→←64話 ▽I need you here.



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設定タグ:名探偵コナン , 降谷零 , 安室透   
作品ジャンル:恋愛
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ひなた(プロフ) - 読ませていただきました!初めてゴリラを好きになれた作品なので感謝しております!そして、少し気になったのが、「緑川」というキャラでおそらく諸伏くんの声優さんと名前がごっちゃになってしまい諸伏くんを緑川と書いたものだと思いますがそこが少し気になりました。 (2022年4月30日 21時) (レス) id: dd9bdc737b (このIDを非表示/違反報告)
りーくん - 待って最後の宣伝のやつ二つとも知ってんだけどwwww (2021年9月1日 21時) (レス) id: 6d65fc1765 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 椎名桃乃さん» わー!ありがとうございます…!そんなそんなもったいないお言葉ばかりですがとっても嬉しいです!見つけてくださってありがとうございました!どうぞお暇潰しにでもゆるりと読んで頂けたらと思います!笑 ありがとうございました! (2019年5月26日 18時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
椎名桃乃 - 狂犬ちゃんを読んでぼろっぼろに泣いて、それから此方の作品を見付けて、いい話だなーとほっこりさせて頂きました!立夏さんは文才力が半端ないですね…!他の作品も読んでみたいと思います! (2019年5月24日 21時) (レス) id: 87ecca1cfc (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - ウィンディ-lilac-さん» わぁぁありがとうございます!!とっくに完結した作品なのに見つけて下さって感謝しかありません…!本作は初めて書いた降谷夢なのでとても嬉しいです!狂犬の方まで本当にありがとうございます!これからもいっぱい文字書きますね!! (2018年8月27日 20時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:立夏 | 作成日時:2018年6月10日 21時

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