47話 ページ4
「Aちゃん、ちょっと静かにして!」
『んー!』
流石に口を塞がれたらしい。
罵詈雑言の嵐が止み、彼がため息をつくのが聞こえた。
「えーと、なんでしたっけ…?
まぁそういうわけですから…奪い返そうとか、思わないで下さいね」
アホか。思うに決まってんだろ。
誰が許すか結婚なんざ。
しかも手前勝手に誘拐までするようなクソ野郎だぞ。ふざけるなよ。
口にはしないが、心の中でA同様にお坊ちゃまを貶す。
──この時、俺は完全に油断していた。
目的が結婚と聞いてどこかで気が抜けてしまっていたのだ。
奴がAを好きなら、Aがまだこんなに元気なら、当分は大丈夫。
Aの身に危険なことが起こることはないはず。
そんな甘ったれたことを思っていた。
けれどAは、この時点でもうこいつの本性に気づいていたのだ。
人懐っこい笑顔の裏に隠された狂気に。
だから、1人で逃げれないわけがない状況下で電話越しに俺を呼んだ。
「──僕、Aちゃんが手に入らないくらいなら殺してしまった方がいいと思ってますから」
「………は?」
ブツッと通話が切れた。
……待て。なんだ今のは。
嫌な汗が背中を伝う。
脳が警鐘を鳴らす。
甘い考えに一気に冷水をぶっかけられた気分になった。
ただの警察官としての勘だ。
それでも幾人の頭のおかしい奴らを見てきた。
言葉の内容はもちろん、あの最後の冷めきった声。
──あいつはかなりやばい。
体に染み付いたなにかがそう言っている。
同時にかなり最悪な仮説が頭をよぎった。
「……っくそ!」
嘘だろ、まじで最悪じゃねえか。
もし本当にそうなら、急がないと…!
RX-7を更に加速させながら携帯を開く。
「おい風見!」
「降谷さん?どうしました?」
「今から可能な限り人を集めて遊佐邸に来い!」
「え?遊佐邸?」
「早くしろ!」
「は、はい!」
Aは相当できる警察官だ。
俺には及ばなくても、長年俺と張り合ってきたんだ。
あいつの腕は信頼してる。
だからこそ、今あいつがやろうとしてることくらいわかる。
わかるから、こんなに焦っているのだ。
渋滞の中を猛スピードですり抜ける。
ギリ、と奥歯を噛み締めた。
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ひなた(プロフ) - 読ませていただきました!初めてゴリラを好きになれた作品なので感謝しております!そして、少し気になったのが、「緑川」というキャラでおそらく諸伏くんの声優さんと名前がごっちゃになってしまい諸伏くんを緑川と書いたものだと思いますがそこが少し気になりました。 (2022年4月30日 21時) (レス) id: dd9bdc737b (このIDを非表示/違反報告)
りーくん - 待って最後の宣伝のやつ二つとも知ってんだけどwwww (2021年9月1日 21時) (レス) id: 6d65fc1765 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 椎名桃乃さん» わー!ありがとうございます…!そんなそんなもったいないお言葉ばかりですがとっても嬉しいです!見つけてくださってありがとうございました!どうぞお暇潰しにでもゆるりと読んで頂けたらと思います!笑 ありがとうございました! (2019年5月26日 18時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
椎名桃乃 - 狂犬ちゃんを読んでぼろっぼろに泣いて、それから此方の作品を見付けて、いい話だなーとほっこりさせて頂きました!立夏さんは文才力が半端ないですね…!他の作品も読んでみたいと思います! (2019年5月24日 21時) (レス) id: 87ecca1cfc (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - ウィンディ-lilac-さん» わぁぁありがとうございます!!とっくに完結した作品なのに見つけて下さって感謝しかありません…!本作は初めて書いた降谷夢なのでとても嬉しいです!狂犬の方まで本当にありがとうございます!これからもいっぱい文字書きますね!! (2018年8月27日 20時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年6月10日 21時