可愛くないキミの落とし方 ２【降谷零/安室透】

62話 ページ19

｢Aさん、安室さんのこと好きだよね？｣

『…………なんのこと｢好きだよね？｣』


食い気味に言われた。怖い。

威圧感がすごくてつい目を逸らしてしまう。



『………だ、誰が零なんか』

｢へーえ｣


するとコナンくんは、まるで悪魔のようなわるーい笑顔を浮かべた。

もうやだ本当に誰か助けて。

ビクビクしながら次の言葉を待っていると、コナンくんはその笑顔のままで可愛く言う。



｢ま、そうだよね〜！Aさん、安室さんのことムカつくって言ってたしね〜！｣

『え？』

｢安室さんって部下にはすごい厳しいし、Aさんも優しくない安室さんなんて好きじゃないよね〜！｣

『ちょ、あの』

｢怖くてムカつく鬼な安室さんなんて眼中にないよね！そうだ、風見さんとか沖矢さんとかどーお？｣

『は？何言ってんの零が１番に決まってるでしょ』



言い終わって『あっ』と自分の口を塞いだ。

ああぁぁぁなにやってるの私！！！こんなわかりやすい挑発にノるなんて！！！

零のことになると取り乱すのどうにかしないとってこの前反省したばっかりじゃない！！！


しかしもう遅い。

｢チョロすぎ｣という素が出てしまってるコナンくんの小さな一言が聞こえてきた。

小学生に…！小学生にチョロいと言われてしまった…！

これでよく公安警察が務まるな案件だ…！

悶絶して床にへたり込む私に、コナンくんがトドメを刺しに来る。




｢Aさん、安室さんのこと好きだよね？｣



『……………好きです』




はっきり“好き”と口に出したのは初めてで、ぶわっと顔が赤くなってしまった。

なんで三十路手前でこんな女子高生みたいな反応してるんだ。

いくらなんでも恋愛偏差値が低すぎやしないだろうか。


小学生の前でこんな顔するなんて恥ずかしすぎる。

しかしコナンくんは私をチラリと見て、すぐに視線を外して無言で自販機のアイスコーヒーのボタンを押した。



『あらブラック？大人ね』

｢砂糖ならAさんたちに散々貰ったからね｣


よくわからない返答はスルーしておく。

すごい勢いで飲み干したコナンくんは、缶をゴミ箱に放り投げて言った。



｢Aさん、素直になってね｣

『え？』

｢見てるこっちはお節介焼きたくなるくらいじれったいんだよ。…要するに応援してるから｣


やっぱりよくわからない。

それでも｢素直になって｣という一言が妙に心に突き刺さって、私は黙って頷いたのだった。

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