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42話 ページ47

『安室さんは無事?』

私のその言葉に、彼はまた笑う。


「真っ先に恋人の心配かい?
大丈夫だよ、声を借りただけで彼にはなにもしてない」

『…恋人じゃないわよ』

「あれ、そうなの?」



驚いたように目をパチパチさせる彼を見ながら、心の中でほっと安堵した。

良かった。零の正体はバレてなさそうだ。

伊織くんの中ではただの喫茶店のバイトだろう。

うん、零が無事ならそれでいい。

これでこっちに集中できる。



『さて、それじゃあ教えてくれる?
何が目的?白石家を貶めること?』

「はは、そんなことに興味はないさ」


笑顔のままの伊織くんは、そのままグイッと私に顔を近づけた。


「僕が欲しいのは君だよ、Aちゃん」

『…どういうこと?』


要するに死ねってか?

私いつの間に恨まれるようなことしたっけ。

しかし続いた言葉は全くもって予想していなかったものだった。



「君と結婚したいってことさ」

『……は?』

「僕のお嫁さんになってよ」



…………なんて?

結婚?え?お嫁さん?伊織くんの?

ちょっと待って落ち着いて私。

まさかこいつ、私と無理にでも結婚するために誘拐を?



「ちなみにAちゃんのご両親の許可は取ってるよ」

『え、いや、私とっくに勘当されて』

「縁を切ってても君の親であることに変わりはないさ」



それはそうだけど。

でもやっぱり目的がわからない。

白石家は相当お金持ちだけど、それでも遊佐グループに比べたら全然だ。

遊佐家と結婚すれば白石家は万々歳だが、遊佐側はそうでもないはず。

要するに私と結婚したところで、伊織くんにメリットはないのだ。


いきなりのプロポーズに混乱しながらも脳を動かす。

だとしたらなんで私と結婚したいだなんて…



そこまで考えて、ふと10年以上前のあの日を思い出した。

高3の冬。

そう、この家の中庭だった。

雪が降っていて、彼の頬が真っ赤で。

そのとき彼が紡いだ言葉が鮮明に蘇る。



「君が好きです、Aちゃん」



あの日と寸分違わない言葉を、今目の前にいる伊織くんが告げた。

呼吸が止まる。

目を逸らさず言った彼に、体が固まる。



「パーティーで会った君はまるで宝石みたいに綺麗になっていた。
でも、僕が大好きだったあの真っ直ぐな瞳は変わってない」


する…と髪をすくい上げられる。


「あの日、君は僕のことを振ったよね。
だけどごめんね。やっぱり諦められそうにないんだ」


言い終わってから、彼は小さく笑った。

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設定タグ:名探偵コナン , 安室透 , 降谷零   
作品ジャンル:恋愛
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立夏(プロフ) - 坂竹会長さん» わわわほんとですね…!ありがとうございます!直しておきます! (2018年9月30日 21時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
坂竹会長 - ページ30、あんなとこでが、あんたとこでになっております。間違っていたらすみません。 失礼しました。 (2018年9月30日 20時) (レス) id: d6f7fc00e7 (このIDを非表示/違反報告)
mリン(プロフ) - 立夏さん» まさか見ていただけてるとは……!夢主ちゃんがどうなるか続きが気になります……。お互い更新頑張りましょう笑 (2018年6月7日 9時) (レス) id: 0761f3b4ce (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - mリンさん» わぁぁmリンさん!初めまして!私もmリンさんの小説いつも楽しみに読ませてもらってます!!本人の前で素直になれるのはいつになるやら…という感じですが応援していただけると嬉しいです笑 ありがとうございます!頑張ります! (2018年6月5日 23時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
mリン(プロフ) - お初にお目にかかります。ちょっと素直になってきた夢主ちゃんがたまらなく可愛いです………。このお話本当に好きです。私のとこの夢主とはえらい違いが……笑 続き楽しみにしてます、更新頑張ってください! (2018年6月5日 23時) (レス) id: 0761f3b4ce (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:立夏 | 作成日時:2018年5月20日 18時

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