可愛くないキミの落とし方【降谷零/安室透】

28話 ページ29

『はじめまして！新人のAといいます！20歳です！』


目の前で笑ってるのか笑ってないのかわからない引きつった顔をしているのはまさかのトリプルフェイス上司。

風見さん。SOSであります。


*


｢ねぇあの席の人ちょーかっこよくない！？｣

｢だよね！あとで行かせてもらお！｣


さっきからずっとキャバ嬢達のそんなヒソヒソ話が聞こえていた。

彼女達の目線の先はもちろんあいつ。イケメンエリート安室透。


零が来店した時はそりゃあもうビビった。

風見さん…何故か零にバレるのすごい恐れてたのにバレたのか…

なんて思ったが、零の隣にいるのは見慣れない男性。

公安として様子を見に来たのではなく、偶然ここにいることはすぐにわかった。

その証拠にずっと零からの視線が遠くからぶっ刺さっている。

同期に見られてる中でキャバ嬢するって地獄すぎない？今すぐ死にたい。



『きゃー！ごめんなさいお酒こぼしちゃった！
すぐに拭きますので！』

｢あはは、いいんだよAちゃん。相変わらずだねぇ｣


風見さーーーんこの茶番いつまで続けないといけないですかーーーーー

ドジっ娘設定とかまじで勘弁してくれ。

てへ☆なんて言いながら机を拭く。我ながら気色悪い。

29歳にもなってなんでこんなバカな娘を演じないといけないんだ。



命令されたなら徹底的に。手は抜かない。

潜入するからには夜の蝶になってやる！

くらいの意気込みで引き受けたのに、標的の好みを聞いた時は机を蹴飛ばしそうになった。


なんだよ若くて明るいドジっ娘って。二次元で探してくれよ。

つーか公安も好み把握しすぎだろ。


それでも私は頑張ったのだ。

初日から早速標的に接触し、バッチリ気に入られた。今横にいるのもそいつだ。

それにこいつ、酒を飲むと口が軽くなるからポンポン情報が出てくる。

ありがたいことこの上ない。



｢Aちゃん、本当に可愛いねぇ…｣


そんなことを言いながら触れてこようとする相手の手をさりげなく避ける。

きもい〜〜きもいきもいまじできもい！！

風見さーーーんもう嫌だ助けてーーー

標的もだけど零からの視線めっちゃ怖いし痛いです風見さーーーーん


耐えろ耐えろ耐えろ。

顔に出したら全てが負け。

えへへーと軽く笑う。

屈辱的なことこの上ない。


しかし単純な男ほどこちらからたくさん質問すれば興味を持ってくれていると勘違いするものである。

ふははこっちが興味あるのは情報だ。

さっさと出して終わらせてくれ。

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