可愛くないキミの落とし方【降谷零/安室透】

18話 ページ19

睡眠はちゃんと取った。

クローゼットからのドレスの発掘は成功したし、いつもよりちゃんとメイクもした。

最後にBluetoothのイヤホンを軽く巻いた髪で隠し、よしと頷く。

さて、あいつを待たせてるし行きますか。


『零、お待たせ』

その声に、携帯を見ていた彼は顔を上げた。


｢あぁ、じゃあ行く…ぞ……｣


しかし零は、私を見るなりビシッと固まった。

…ん？なんだろう、もしかしてこの格好はやばかっただろうか。

あ、派手すぎたかな？と思いながら零の顔を覗き込む。


『なに？』

｢…いや｣

『あはは、もしかして見とれてんの？
どうよどうよ、綺麗？』


ちなみに着ているのは膝丈のドレス。

茶化すようにその場でクルリと回る。

しかし零は私の言葉に見開いていた目を元に戻し、きゅっと眉を寄せた。



｢…………馬子にも衣装｣


『さいっってー…』



レディが着飾ってんだから褒め言葉の１つや２つ言えっての。

今日から呼び名をデリカシー零に変えてやろうか。

ふんっと顔を背けて歩き出す。



もう会場内には入っている。

今日この場所で、少し前から追っている件の取引が行われるという情報が入った。

なんでも中心になってる奴が直々に来てるんだとか。

というわけで、私たちの今日の任務は取引現場を確認すること。

その場で逮捕するかは状況に応じてって感じ。

だから今日は、怪しい奴がいないかどうか目を光らせていないといけないのだ。



にしても…

私は目だけでパーティー会場を見回した。


｢こういう場所は久しぶり？｣


上から降ってきた声にびくっと肩が跳ねた。

だって今考えてたことをそのまま言われたのだ。

あれ？でも今、久しぶりって…


『まるで私が昔、頻繁にこういうところに来てたみたいな言い方ね』

｢違うのか？てっきりお前は良いところのお嬢様だと思ってたけど｣

『…なんで知ってるの？』


その話は今までしたことないはずだ。

だって意図的に避けてたのだから。

思わずじっと見つめると、零はなんでもなさそうに言う。



｢時々出る育ちの良さとか、警察学校時代の世間知らずさとかでなんとなく。
結構みんな勘づいてたと思うけど｣

『えぇ、うそでしょ』


みんなというのは松田や緑川達だろう。

まじかバレてたのか。

いや別にバレて困るというわけではないけど。


『頻繁に来てたわけじゃないわよ。好きじゃなかったし』

｢へぇ、意外だな｣


そうかしら。だってこういう場は息が詰まるのだ。

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