可愛くないキミの落とし方【降谷零/安室透】

17話 ▽Party ページ18

バキッと板チョコをそのまま齧った。

机の上には書類の山。

そして空になった栄養ドリンクたち。


おかしい。さっきからカフェインが効かない。全く目がシャキッとしてくれない。

最早気力だけで落ちそうになるまぶたを固定している。

あまりに減らない目の前の仕事に、私は思わず声を上げた。



『あーもう！なんでこんなに終わらないのよ！』

｢うるさい…頭に響くから叫ぶな…｣


隣で力なく言うのはキラキラエリートイケメンなはずの降谷零。

しかし今はもう屍も同然。キラキラオーラは消え失せている。



キャンプの一件からしばらく経った。

が、後処理がかなり面倒くさい上に新たな案件も積もりに積もり、ここ数日は完全に徹夜コースまっしぐら。

一晩中パソコンとにらめっこしてるのだ。いい加減にしてほしい。



『そろそろ過労で死ぬかも』

｢三徹くらいで大袈裟だなぁ｣

『体力値カンストゴリラと一緒にしないでくれる？』

｢いいことを教えてやろう。
徹夜し続けたら逆に眠くなくなるんだ｣

『それかなりやばいやつ』

｢お前もやってみろ｣

『オススメしないで』


死ぬならお前１人で死んでくれ。

まったく、これだからこの仕事バカは…



何本目かわからない栄養ドリンクを飲み干して肩を回す。

バキバキメキャッとえげつない音がした。

待って今のは体から鳴ってはいけない音でしょ。

我ながらちょっと引いていると、零が書面から目を離さずに言う。



｢A、これ一段落したら寝とけよ｣

『言われなくてもそのつもりだけど』

｢明日の夜、俺とお前で都内のパーティー会場に潜入するから｣

『……はい？』


……んん？そんな予定あったっけ？

眠くて忘れてるのかと手帳を確認するが、何も書いてない。


『聞いてないんだけど』

｢言ってないからな｣

『ざけんなクソ上司』

｢金持ちが集まる普通のパーティーだよ。
例の件の中心の奴がそこで動くって情報が入ったんだ｣

『あ、そう…』


そうですか…パーティーね…

ちゃんとしたドレスとか持ってたっけ？

確かクローゼットの奥にしまい込んだ気がするけど。

ていうかパーティーて。いかにもあの神出鬼没なメンバーが出揃いそうな場だ。



『それ、鈴木財閥は関係ないのよね？』

｢ああ。そのへんは大丈夫。顔見知りは来ないよ｣

『ふーん…』

｢どうした？｣

『別になにも』


適当に返してまたキーボードを叩く。

一段落するのはいつかなーと回らない頭で考えた。

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