可愛くないキミの落とし方【降谷零/安室透】

13話 ページ14

零の荒々しい運転とガタガタの山道のせいで車の中はそれはもう揺れる揺れる。

全速力でノーパソのキーボードを叩いていると、横から急かす声が飛んできた。


｢おい！まだか！？｣

『待って、あと30秒で終わる！』


液晶画面を睨みながら挑むは周辺の監視カメラのハッキング。

このご時世、山道であっても監視カメラは想像以上にあるのだ。

しばらくは一本道が続くとはいえ、分かれ道はいずれ来る。

とりあえず目標の車の位置を確認出来なければ打つ手もない。

街に出られたら人も多いし面倒だ。



｢仕事しろカーナビ！分かれ道だぞ！｣

『誰がカーナビだ！右よ！』


なんとかギリギリでハッキングが完了した。

さっきの軽自動車のいる位置を、携帯で出したマップと照らし合わせる。


｢目標の位置は｣

『たった今、道の駅の前を通過』

｢了解、ならこっちの方が早い｣

『は！？ちょっとなにすんの！？』


言うが早いか、零は躊躇なく道の外へハンドルを切った。

道と呼べない木々の合間をスピードを緩めずに突っ切る。

え！？は！？なにやってんのこの人！？


バキバキッと木の枝が折れる音がひっきりなしに聞こえ、思わず隣を見た。

が、しかしその表情を目にすれば諦めもつくというものだ。

めちゃくちゃ調子乗った顔してるよこいつ…

これは止められないな。今回もRX-7くんには犠牲になってもらおう。


最後に１発派手な音がして、車がまた道へ出た。

視界に狙っていた軽自動車を捉える。

まじか本当に追いついたよやべえ…

この先の角を曲がれば、数100ｍの直線だ。今しかない。



『零、拳銃！』

｢外すなよ！｣

『誰が！』


雑に投げられた拳銃を受け取って窓を全開にする。

窓から身を乗り出して淵に腰かけ、安全装置を外した。


狙うのはタイヤだ。

ぶっちゃけかなり揺れるしきついけど、外すなんて選択肢はない。


ギリギリまで狙いを定める。

目標が次の角を曲がる直前、引き金を引いた。

いける…！

馬鹿でかい音が鳴り響き、前の車の後部車輪を弾丸が貫いた。



『よしっ！』


さっすが私！完璧！

軽自動車は崖から落ちるすんでのところで止まった。

零が急ブレーキをかけたせいで落っこちそうになったが、なんとか堪える。

その直後、バキッと嫌な音が前から聞こえ、思わず目を瞑った。


うわぁ、容赦ねえ…流石、泣く子も黙る公安警察。

零に殴られて伸びている犯人に手錠をかける。


『はんにんかくほ』

｢ん、おつかれ｣

本当にな。

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