1話 ページ2
時はとある土曜日の夜8時。
行きつけの喫茶店のカウンター。
人の少なくなった店内で、その声は控えめに響いた。
「どうぞ、カフェラテです」
カタンと音を立てて置かれた可愛らしいコーヒーカップに、ぼんやりしていた私はハッと顔を上げた。
『ありがとうございます、安室さん』
ニッコリと微笑むと、彼は優しくて甘い、女の子なら一瞬で落ちてしまいそうな笑顔を浮かべる。
それらが全部演技であるとわかっている私は、心の中でちょっとびっくりしていた。
へぇ、こんな顔もできるのか。よくもまぁこんな完璧な笑顔を貼り付けられるものである。
「お久しぶりですね、Aさん。
最近お忙しかったんですか?」
『ええ、ちょっと仕事で。心ない上司にこき使われてまして』
「そうなんですか…大変ですね」
大変ですねじゃねえよ。
目の前にいる“心ない上司”ご本人様は、私の煽りに一切反応せず、むしろ心配している様子を全面に押し出して眉を下げた。
めちゃくちゃ白々しい。
さて、警察学校時代からの同期であり、今は上司と部下の関係である私たちが、どうしてこんな演技をしているか御説明させて頂こう。
時は“降谷零”が“安室透”として喫茶ポアロでバイトを始めだした頃に遡る。
あの日、私は疲れていたのだ。
降谷とかいう鬼上司にボロ雑巾よろしくこき使われ、徹夜続きで身体はバキバキ。
判断力の1つや2つ、狂ってもおかしくない状況下。
そうだ、零が店員として働いてるところを見に行ってやろう。
なんなら後で思う存分からかってやろう。
そんなことを思ってしまったのである。
結果として私は、普段目をギラギラさせながら仕事をしている同期が、愛想を振りまきルンルンで店員をしている姿に一周まわって吐き気を催したのだが、まぁそんなことはどうでもよくて。
当然次の日、こっぴどく怒られた。
「ふざけるのも大概にしろ」
「こっちは遊びじゃないんだ」
「お前の精神年齢は小学生以下か?」
最後に伝家の宝刀「これでよく公安が務まるな」が頭上に炸裂した直後、事件は起こったのである。
零は何故かそこでピタリと言葉を止め、少し考え込んだ。
そして続いた内容はこうだ。
「いや、でも外で堂々と会えるようになるのは便利かもしれない」
「毛利先生の周りにもう1人誰かいた方が良いだろうし」
「よし、お前ポアロの常連客になれ」
最高に意味がわからない。
疲れていたのは零も一緒だったのではなかろうか。
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立夏(プロフ) - 坂竹会長さん» わわわほんとですね…!ありがとうございます!直しておきます! (2018年9月30日 21時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
坂竹会長 - ページ30、あんなとこでが、あんたとこでになっております。間違っていたらすみません。 失礼しました。 (2018年9月30日 20時) (レス) id: d6f7fc00e7 (このIDを非表示/違反報告)
mリン(プロフ) - 立夏さん» まさか見ていただけてるとは……!夢主ちゃんがどうなるか続きが気になります……。お互い更新頑張りましょう笑 (2018年6月7日 9時) (レス) id: 0761f3b4ce (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - mリンさん» わぁぁmリンさん!初めまして!私もmリンさんの小説いつも楽しみに読ませてもらってます!!本人の前で素直になれるのはいつになるやら…という感じですが応援していただけると嬉しいです笑 ありがとうございます!頑張ります! (2018年6月5日 23時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
mリン(プロフ) - お初にお目にかかります。ちょっと素直になってきた夢主ちゃんがたまらなく可愛いです………。このお話本当に好きです。私のとこの夢主とはえらい違いが……笑 続き楽しみにしてます、更新頑張ってください! (2018年6月5日 23時) (レス) id: 0761f3b4ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年5月20日 18時