可愛くないキミの落とし方【降谷零/安室透】

8話 ページ9

｢あの！安室さんとAさんって付き合ってるんですか！？｣

『｢へ？｣』


高速道路の上。白のRX-7の車内。

後部座席から聞こえた高い声に、私と零は揃って後ろを向いた。

いや零は向くなよ運転中だろ。安全第一。


しかし何かと思えば恋バナか…流石JK、若いなぁ…

苦笑しながら、私は後ろの二人に答える。



『付き合ってないよ、安室さんは良い飲み友達って感じかな』

｢ですね。Aさんみたいな素敵な方、僕にはもったいないですよ｣

『あはは、安室さんったら相変わらずお上手なんだから』


ほんとお上手だな…よくそんなポンポン歯の浮くようなセリフが出てくるものだ。

零の恥ずかしい言葉に、JKは｢きゃーっ｣と可愛らしく頬を染める。若い若い若い。



｢でも、もしお二人が付き合ったら美男美女カップルだな〜なんて！｣

｢そうですよ！いつもポアロのカウンターで話してる安室さんとAさん、すごい絵になってるんですから！｣

『ふふ、二人とも大人の扱いがわかってるなぁ。今度ジュース奢ってあげる！』

｢じゃあ僕からはケーキで｣

｢あはは、やだなぁそんなつもりじゃないですよ！｣



…まぁ、29年も生きてたらこんな話題の躱し方くらい身につく訳でして。

だって蘭ちゃん達って今高２でしょ？

え、待って一回りも違うのか。怖すぎる。



｢でもAさん、本当にそういう話ないんですか？｣

｢ほら、結婚願望とか…｣

『えー？んーそうだなぁ…』


二人の言葉に首を捻る。

そりゃあ考えたことないわけじゃないけど…


『もうこの年になってくると諦めもつくというか…』

｢え！？まだ29ですよね！？｣

『まあね、でも今もこれからも仕事一筋って感じかな！婚活なんてしてる暇ないし！』


合コンとやらに誘われたことはあったが、全部仕事で潰された。

狙ったように合コンの日に急な仕事を入れてくる零に、嫌がらせかよと足を踏んずけたのはいい思い出。良くないけど。

ちなみに本人曰くまじで嫌がらせだったらしい。ふざけるな。

笑って言った私に、二人は｢えぇー｣と不満げに声を漏らす。



｢もったいないなぁ、Aさん可愛いのに｣

｢本当ですよね、僕とかどうです？｣

『あはは、冗談きついですよ〜安室さん』


いやまじで今日ぶっ飛んでんな安室どうしたしつこいぞ。

昨日砂糖増し増しコーヒーを出してやったのがそんなに気に食わなかったか。


こんな感じで、行きの道中は何年ぶりかの恋バナで終わったのだった。

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