可愛くないキミの落とし方【降谷零/安室透】

6話 ページ7

最後に休みを貰ったのはいつだっただろうか。

数ヶ月前だっけ？はは、ブラック…

そんなことを考えながら歩道の端に寄り、通話ボタンを押す。


『どーも、今日も猫被りお疲れ様でーしゅ』

｢シバくぞ｣


割とドスの効いた声がスマホの向こうから聞こえた。

しかしこれくらい日常茶飯事。お互い気にせず本題に入る。


｢A、今週末なんだが…｣

『あぁ、キャンプ？』


なんだその話か。ちょうど良かった。

話す前に私が言ったことに驚いたようで、零は｢あれ？｣と素っ頓狂な声を上げる。


｢なんで知ってるんだ？｣

『今ポアロで蘭ちゃん達に聞いたの』

｢は？お前ポアロにいるのか？｣

『え、うん』


急に零の声がワントーン下がった。

え…もしかしたら何か予定を忘れていただろうか。

しかし続いて電話から聞こえてきたのはよくわからない言葉。


｢なんで俺が帰った直後に来てるんだよ｣

『え？いつ来てもいいでしょ。こっちだって暇じゃないのよ』

｢もうちょっと早く来たら会えただろ｣

『はぁ？別に用事もないんだしいいじゃない』

｢そうじゃなくて…｣


煮え切らない態度の零に思わず眉が寄る。


『なに拗ねてんのよ』

｢拗ねてない｣


すねてるじゃん、と言いたかったが、このまま続けても埒が明かない。私は無視して話を進めた。



『で、キャンプのことだけど。
私も蘭ちゃん達に誘われたの。行っていいよね？』

｢そうなのか？ああ、良いぞ｣

『やった！』


よし、案外すんなりOKが出た。

泊まりなんていつぶりだろう。久々の遊びの予定に自然と心が踊る。

しかし、零の言葉は｢そのかわり｣と続いた。


｢いる物はちゃんと持ってきとけよ｣

『は？なんのこと？』

｢そこのキャンプ場、ちょっと怪しい動きがあってな。確認したいから夜に動くぞ｣

『……………』


……結局仕事かよ。

上司同伴とはいえ楽しいキャンプの予定だったはずなのに、一気に憂鬱になった。


『そろそろあんたの寝込み襲いそう…』

｢随分大胆だな｣

『命を狙うって言ってんのよ、セクハラで訴えるわよ』


はぁ、とため息をつく。

となるとやることは多い。週末休む分の仕事も片さないといけない。


『あーもう、今週寝られないじゃん』

｢この件に関する資料纏めとけよ｣

『自分でやれ』

｢あ？｣

『謹んでお受けします』

｢よろしい｣


軽い笑い声が聞こえたあと、通話は切れた。

あのクソ上司、１回事故れと思いながら、私はポアロに戻ったのであった。

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