可愛くないキミの落とし方【降谷零/安室透】

その２ ページ36

『そこバカ４人組！ちょっと審判やってくれない！？』

｢誰がバカ４人組だって？｣


部屋に入るなりそう言った私を、零を除くいつものメンツは｢またか｣と言いたげに呆れたような顔をした。

少し口を尖らせて文句を言った萩原はスルー。

私に続いて入ってきた零を見ながら、伊達が口を開いた。



｢で、今日はなんの勝負だ？｣

『ガトーショコラ作ったの。どっちが美味しいか食べてみて！』

｢お前も懲りないよなぁ｣

『松田うるさい！別にいいでしょ！』

｢どうせ今回も俺の勝ちだぞ｣

『はぁ？余裕ぶっこいてられるのも今のうちなんだからね！』



言い返しながら、零と私は各々が作ったガトーショコラを４人の前に並べる。


ここに入学するまでは料理なんて多少しか出来なかった。

しかし零が得意と聞いてはやらないわけにはいかない。

忙しい生活の中で合間を見つけ、特訓していたのだ。

ぶっちゃけかなり極めた。今回のも間違いなく美味しい…はず。

誰かに食べてもらうのは初だから出来はいまいちわからないのだ。


すごい勢いで２つのガトーショコラを平らげていく４人の顔色をそろりと伺った。



『ど、どう…？』

｢うーん、そうだな…｣


４人揃って腕を組んで思案顔。

被った姿勢に思わず吹き出しそうになる。

しかし続いた言葉が一気にそんな気を失わせた。


｢降谷の勝ちかな｣

｢降谷だな｣

｢ゼロかなー｣

｢降谷｣


｢決まりだな｣

『くっっそーーーー！！！！』



満場一致で零かよ！！

流石に１票も入んないとは思ってなかった！！


｢白石のも美味かったぞ｣

｢ああ、降谷のが美味すぎるだけだ｣


緑川と萩原が慰めてくれた。

そう言ってくれるなら…と思いかけたが、いやいやダメよ白石A。

私の目標は零に勝つことなんだから！

１人で心に言い聞かせ、零が作ったガトーショコラを一口食べる。

…え！？うますぎじゃない！？


『なにこれおいしー！
零、あとで作り方教えて！？』

｢お前プライド高いのか低いのかわかんねえよな…｣

『松田うるさい！零に勝つためならなんでもするの！』


でも本当に美味しい。

口に入れた瞬間フワリととろけてしまった。

家が家だけにお高いスイーツはたくさん食べてきたけど、その中でもトップレベルに美味しかった。


｢別に作り方くらい良いけど、Aのだってうまいじゃん｣

『やめろ、敵の情は受けぬ』

｢なんだそれ｣


そう言って笑い合った私達を、４人が驚いたように見ていた。

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