挨拶の魔法 ページ20
「……娘さんをボクにください!」
「娘はやらんぞ!」
『お父さん、ちょっと』
「にいなちゃん痛いです」
2人とも学院を卒業してしばらくたった日、私のお父さんに正式に挨拶に行くことになった。
夏目くんはひどく緊張しているらしく、語尾に歪みを感じない。対象に私はあまり不安に感じていなかった。なぜならお父さんは私たちの仲を軽く引くくらい応援しているからである。
だからこの大事な時に冗談を言ったお父さんの足を、思わず踏みつけてしまった。夏目くんの不安を煽るようなことを言わないでください。
『昨日まで式場はどこにするなんて気の早いこと言ってたの、安心して夏目くん』
「ま、ひとつだけ言わせてもらうとすればだな」
お父さんは踏みつけた足を労わりながら、微笑みの中に真剣な表情を見せた。
「経験上、アイドルは大変な仕事だ。常に辛さを伴う、その中で幸せを見出して、にいなをどうサポートしていくか……にいなを幸福にできる自信は君にあるかい?」
「お父さん、以前言ってくれましたよね」
「君にお父さんと呼ばれる筋合いはない!」
『言ってみたかっただけだろうから続けてください』
「……「絶対に幸せにする」、この言葉を2人一緒に聞きたいと」
私が事故で眠っていた時だろうか、そういえば夏目くんに、お父さんに会ったと聞いた気がする。
「アイドルとして成功することを約束することはできません。ですが、にいなさんを絶対に悲しませない」
そして夏目くんは一度姿勢を正し、深く、深く頭を下げた。夏目くんのアシンメトリーな赤髪が、テーブルに触れる。
「娘さんをボクにください」
「……寂しくなるな」
それがOKの合図だというのは、馬鹿な私でもわかる。それを聞いた夏目くんが、大きなため息と共にテーブルに突っ伏した。安心して力が抜けたらしい。
私とお父さんで、そんな夏目くんを微笑み見つめる。仏壇の中のお母さんも、きっと同じ顔して見ていることだろう。
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ぶるブルブルミちゃん(プロフ) - 推゙じが尊゙い゙っ゙っ゙!!!!!ぐうかわっ!更新頑張ってください (2022年2月11日 20時) (レス) id: 33d476be95 (このIDを非表示/違反報告)
みーぼー(プロフ) - ご丁寧にありがとうございます!!🙇🏻♀️私の理解力がなくて申し訳ないです💦素敵なお話ですね✨夏目くん推しなのでとーーってもキュンキュンさせてもらってます🥰ほんとにありがとうございました!! (2021年10月13日 18時) (レス) id: 038716753e (このIDを非表示/違反報告)
桜乃茜(プロフ) - みーぼーさん» はじめまして、コメントありがとうございます!実は主人公ちゃんが何気なく言った「あったかい」には、「あなたがそばにいてくれて私は幸せです」という意味があります。なので夏目くんは「ボクも幸せ」と言ったんですね!こちらも文章力がなくて誠にすみませんでした! (2021年10月13日 17時) (レス) @page19 id: a0b00e9326 (このIDを非表示/違反報告)
みーぼー(プロフ) - 初めまして!!急にすみませんっ💦 ぽかぽかの魔法のところ、私の語彙力がなくて理解できませんでした😭 主人公ちゃんは何を言ったのでしょうか?! とてもとても気になっております🙏🙏 (2021年10月13日 11時) (レス) @page19 id: 038716753e (このIDを非表示/違反報告)
桜乃茜(プロフ) - 冬枯さん» コメントありがとうございます!まじ逆先ってやつは俺たちを狂わせるのが好きだなぁ!?(())確定演出ですり抜けは最高につらですね……こちらは先程10連を引いたらお迎えしました!(自慢乙)これからも夏目くんとこの作品を好きでいてください!ありがとうございます! (2020年10月3日 21時) (レス) id: 8b70bc5459 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜乃茜 | 作成日時:2020年6月10日 21時