王と騎士とお姫様【月永レオ】 (ページ24)

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王様とお姫様の優雅な遊びページ24

『ごめんなさいごめんなさいごめんなさいいいいいいいいい！！！！』

「わははー！☆待て待て！！逃げるな〜！！！ってお前足意外と速いな！？」

左の頬を真っ赤にさせた(物理的)人が飽きることなくあたしを追いかけ回してくる。

先程、裏庭での出来事。
思いっきりこの人の顔を叩いてしまった。

制服はアイドル科だろうな、と瞬時に頭が回転していく。
あぁ、やってしまった。アイドルの顔を…

そこからはもうお察しの通り、このザマである。

『(まさかあたしが音速平謝りをすることになるなんて…)』

いつかの、苦労人に音速土下座してもらおうと考えていたんだけど、それが似たような形で自分に来るとは誰も予想しないだろう。

頭を下げて思いっきりダッシュすれば、なんで逃げるんだ！？と彼も追いかけてくる。

その間、あたしはただひたすらにごめんなさいと言い続けながら逃げるしかない。

「なあ！待ってよ！！！なんで逃げるんだよ！お前の顔ちゃんと見せてよ！！！」

『嫌ですぅぅぅぅぅぅううう！！！』

顔を覚えて後々復讐する気ですか！？なんなんですか！？
アイドルってプライド高いからそーゆー事ありそうだよね！？嫌だよ！？

『許してくださいいいいいいいいい』

そろそろ限界が来そう。
数ヶ月前まで、音楽科でただピアノを弾いていたあたしにこの長期間の鬼ごっこという優雅な遊びはキツい。

そしてまたこの人は執着心が凄いのかなんなのか、息を乱すことなくこちらに突進してくる。

ここで彼に捕まったらあたしは放課後に生きてセナハウスまで辿り着けるかも危うい。

アップルグリーンの目を楽しそうに輝かせる彼は、どこかのボンクラ皇帝みたいに、なにか大役があるのだろうか。

目が覚めたらいつの間にか居たし、魔法使い？それともエスパー？超能力者？

それともベートーヴェンの生まれ変わりなの？

だんだんと走るスピードが落ちてきて、ピタッとあたしの足は止まる。

よく良く考えれば、この人の顔は見たことがない。
直接関わることはなくても、ある程度、この学院の生徒の顔は覚えたはずなのに。

長髪の先輩たちは何人かいるけど、短くもないし長すぎる訳でも無い、綺麗な橙色の髪をした人なんていただろうか？

後ろから走ってくる彼をじっと見つめていれば、ぶつかるー！！！とスピードを落とすことなく突っ込んでくる。

『あぶなっ！？！？』

ヒョイッとそれを避ければ彼は、べしゃ！！と床に倒れ込んだ。