王と騎士とお姫様【月永レオ】 (ページ37)

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歌で愛を示せなくともページ37

やはり違和感は隠しきれなかったか。

"あたし達のお姫様"はそれぞれの反応を示しているのがここから見える。

どのお姫様の目にも動揺が走っていた。

それもそのはず。

曲も2番目のサビにさしかかろうとしている。
それなのに、ステージ上に立っているはずの"女王陛下"の歌声が一切会場には響いていない。

1曲目はKnightsが結成した時からある持ち歌。

それはプリンセスライブでも披露したもので、その時は間違いなく、あたしの声がライブ会場に響いていたのに。

あたしがセンターだった所は凛月くんだったり泉さんだったり。
あたしが真ん中に立つことはほとんど無い。

あの時のライブでどうやらあたしにもお姫様が出来たらしく、王女様こっちを向いて！とか優雅に笑って！と書かれたうちわを持つ人々がそこには居た。

ステージの上に。確かにKnightsはここに居る。
だけど、あたしはここには居ない。
そんな謎の不安がところどころあたしを襲った。

それでも、声を出せなくたって踊れていたのは傍に駆け寄ってファンサを一緒にしようとしてくる愛らしいあたしの騎士たちと、懸命にペンライトを振ってくれるお姫様達がいたからだった。

ふと、集中が途切れ、舞台袖からなにか痛い視線を感じた。
敵陣の王、月永レオ。

先程、ナイトキラーズのメンツ紹介の時、彼の名前を初めて知った。

黒い衣装を身に纏う彼の視線は

どうして？なぜ？お前は歌わないの？Knightsなんだろ？どうして、これは間違いなく俺の作った曲なのに。

"お前は歌ってくれないの"

そう語っていた。

それが曲の途中から刺さってくるもんで、集中したくてもすぐ途切れてしまう。

ぽん、と肩を叩かれ隣を見れば末っ子すーちゃん。

1人だけ長いマントをゆらゆらと揺らし、小声で私とご一緒に、と言いこの手を取りファンサの嵐。

それでまた、キャー！とか可愛いー！とか黄色い声があたし達に届いた。

何だかもう、本当に。
このお姫様たちには泣かされてばかりだ。

声で、歌で、愛を示せなくたって。
あたしにはこの数カ月で磨き上げたアイドルスキルがある。

音楽科にいた時のあたしでは絶対に出来ない全力の笑顔とファンサ。

曲が終盤を迎える頃にはみんなの感じる違和感はどこかへ消え去っていた

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