先輩×後輩=(？)【朔間凛月】 (ページ39)

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長い冬が終わって、桜が咲く季節になった頃

「うっし、凛月準備OK！」

「ネクタイぐらい自分で出来るけど…」

「まあそう言うなって♪」

そろそろ自立しようと決意した矢先に幼なじみの過保護が発動し始める。

「(何だか慣れないねぇ…)」

本来なら昨年身につけるはずだった幼なじみとお揃いの緑のソレに違和感を覚えながら家を出る。

朝から眩しい日差しにも未だに慣れない。
思わず目を瞑りたくなるのを我慢して、他愛もない話をしながら通学路を歩く。

「はぁ〜俺も遂に生徒会長か…。今年も休む暇は無さそうだなぁ？」

「ふふ、大丈夫だよ。俺がめいっぱい応援してあげる…♪頑張れ頑張れま〜くん♪」

弱音を吐く割には何処か楽しそうな幼なじみは相も変わらず苦労人を全うしようとしている。

俺も負けられない、なんて思う頃には学院に着いていた。

校内に入ったところで日差しがなくなり、ある程度は動きやすくなったと感じた時

飛んでくる馴染みのあるあの子の声

『先輩方〜！うっちゅっちゅ〜☆』

「はいはい、うっちゅっちゅ〜。今日も元気だねぇ、Aは」

「おっす、A。おはような〜」

先月卒業して今は遠い海外で活躍している“元王さま”のダブルピースと挨拶を真似しては笑顔を見せるA。

その胸元では青いリボンが揺れていた。

『お兄ちゃんが居なくなって寂しいんでしょ、凛月先輩？』

「寂しくない訳では無いけどねぇ〜」

もう一生会えないわけじゃないし、と付け加えたら『あたしは死ぬほど寂しいです！！！』と唯一の兄を恋しがる。

そんなAと「生徒会室に行くから」とま〜くんだけ別行動で俺たちは一緒に教室まで向かう。

途中、教室までの分かれ道がやってきて、「じゃあ、また放課後ね」と笑いかけると控えめに引っ張られる腕。

「月ぴ〜のこと思い出しちゃった？」

『そうじゃないんですけど…』

恥ずかしげに視線を外すAは、これでもかと言うくらいわかりやすい。

そんな所が可愛いんだけどね〜…♪

「んふふ、がんばってねA♪」

『ッはい！』

笑顔で頭をひと撫ですれば、一気に華の咲いたような笑顔に変わり教室に向かって一直線に歩き出すA。

1人で教室に向かってる最中、ふとある事を考えてニヤつきそうなのを我慢しながら「おぃ〜っす」とクラスメイトに手を振った。

あの子に触れられるのも、キスを出来るのも、この世界で俺だけなんだって優越感に浸りながら。

fin *