スキになったら負け！【Hirano.S】 (ページ41)

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episode38 ページ41

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「ちょこ？笑…あぁ、チョコね！寄りたい？…あーでももう閉まってるのかな」

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彼がそう言って笑うと、
ちょうど目の前の信号が青になった。

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「閉まってそうだし…送ってもらっている身でそんなわがまま言えないです…ごめんなさい」

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そのまま車が走り出して、

私も、彼も、

また何も話さないまま

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目的地の駅が近づいてきた。

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「駅からお家は近いん？」

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駅に近づき格段に人通りが多くなった道を走りながら
ふと一瞬彼が私を見て聞く。

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さっきお店で助けてもらった時からそうだけど
彼の相手を不快にさせない不意なタメ口に
またキュンとする。

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「15分くらい歩くかな？」

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駅から徒歩数分圏内は家賃が跳ね上がるからね…

私が答えると

「？！」

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なぜかびっくりしたようにこちらを振り返り

「なら、もうちょっと近くまで送ります。今日知り合った男に家の場所を言うのも嫌だと思うし、なんか目印言ってもらえればそこまで」

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やっぱり年下とは思えないくらい
すごく気を遣ってくれたので

「じゃあ近くにコンビニがあるのでそこまでいいですか？」

散々甘えさせてもらっているけど
素直におねがいすると

「りょーかい！」

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急に少年みたいにニッコリ笑って言った。

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「今日は本当に、本当にありがとうございました。初対面の私に親切にして下さって…お礼も出来ずすみません。」

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指定したコンビニの駐車場で彼の車を降りようと
シートベルトを外して頭を下げた。

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「お礼なんて大丈夫なんで気にしないでください！でも、気をつけて下さいね！お姉さん酔っ払ったら、ケッコーあぶなそうですから。笑」

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他人の心配をここまでできるなんて
本当に優しい人だなぁって

この日仕事でやさぐれてたはずの心が
いつのまにか幸せな気持ちで満たされていたことに気付く。

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こういう時って「お礼させてください」とか
そんなこと言って連絡先を聞くべきだったのか、

車のドアを開けたら急に
彼との別れが惜しくなって

さっきは「お礼も出来ず…」なんて言った自分にちょっと後悔した。

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あーあ、寂しいな。

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そう思った時、

「ねね、おねーさん。」

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車から降りかけた私の手が
優しく引かれた。