スキになったら負け！【Hirano.S】 (ページ16)

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episode16 ページ16

お昼過ぎ、
一人でご飯を食べて
家の片付けをしていたら

「Aさーん、きてー」

寝室から、
彼の呼ぶ声がして

「どうしたの？なんか飲む？」

小走りでかけつけると

さっきより随分顔色の良くなった紫耀くんが
横になったまま私を見つめてなにも言わない。

「ん？なぁに？」

近づくと、相変わらず黙ったまま
布団の端から腕が伸びてきて

「ねぇ、多分風邪じゃないから一緒にいて？」って
まるでおねだりでもするかのようにナチュラルに首を傾げるから

歳上の私に眠っていた母性本能がくすぐられて

「寂しいの？…しょーがないなぁ」

なんて、強気なこといいながら
本当は可愛くて
思わず抱きしめたくなった。

下がったとはいえ、
まだ熱はあるようで

「調子わるいとさ、甘えたくなるのなんでやろね？」

いつもは私が紫耀くんの胸に頰を寄せるのに、
今日は紫耀くんが私の胸元に顔を寄せて
そんな風に呟くと
胸元にかかる息が熱くて……

「早く良くなるといいね」

まるで大きな子供でもあやすように
背中をポンポンとリズムよく叩いてあげると、
紫耀くんはちょっと恥ずかしそうに笑ってまた目を閉じた。

…まぁ、その背中の逞しさったらないんだけど。笑

元気になった紫耀くんと、
また空気の澄んだ自然をドライブすることを想像しながら

私も隣でそっと目を閉じた。