058：背中で伝える言葉 ページ9
「よっ…」
前に立っているソヌの腕につかまって立ち上がり自転車に飛び乗った私。
こうやって自転車の後ろに乗ってソヌの腰に手を回すのも最近は慣れてきた気がする。
さっきはいきなり目の前にソヌが現れて、とっさに“待ってた”なんて言ったけど、
本当はここから動けなかっただけ…
ジョンファンの事で頭がいっぱいで、動くことが出来ず座り込んでただけだった
SN「…大丈夫か?」
「うん!!」
どれだけ明るく振舞ってもバレているみたいで、さっきから私の顔を心配そうに見ているソヌ。
でもそんな視線は無視して「それじゃあ出発!!」なんて言いながら前を指差す私に
「へいへい」とソヌがダルそうに返事を返すと
ゆっくりと動きだして徐々にスピードが速くなっていく自転車。
でも風を切って走る自転車はいつもの帰り道じゃなくて、
少し遠回りしてくれてるんだってすぐに分かった
「ソヌー」
SN「んー?」
「…ソヌー…」
SN「フッ、なんだよっ」
「…ごめんね…」
SN「…なにが」
「……全部」
顔を合わせるとなかなか言えない言葉を、ソヌの背中で伝えた私
「それと…ありがと」
SN「なにが」
「うーん…それも全部」
SN「全部じゃ分かんねぇよ」
「…だね」
ソヌと会話をしたのはそこまでで、その後は何も話さずただ夏の風を感じていた。
そして少し遠回りしてマンションに着いた頃には辺りはすっかり暗くなっていて
外灯が私達の家の玄関を照らしている。
私は玄関の前に立ち「じゃあね」と手を振ったのに、なぜかなかなか家の中に入ろうとしないソヌ
「何で入らないの?」
SN「Aが入ったら入る」
「じゃあ私もソヌが入ったら入る」
SN「真似すんなよっ」
「真似じゃないもんっ」
SN「いや、完全に真似だろ」
「違うもんっ」
SN「……プッ」
「…フフフッ」
SN「ったく、くだらねぇー」
「ハハッ、本当だね
……はぁー…ソヌが居てくれて良かった」
SN「そう…そりゃ良かった。
本当にそう思ってんなら
今度から少しは俺に優しくしろよっ」
「うーん…考えとく。じゃあね!!」
私はそれだけ言うと、玄関を開けすばやく家の中に入った。
さっき言った言葉は心の底から思えた私の本心、ソヌが居てくれて良かったって本当に思ってる…
だって、ソヌが居なかったら今頃私は涙が止まらずに泣き続けていたかもしれないから
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 54人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：のん | 作成日時：2016年5月17日 21時
