第三話 ページ5
Aが長い階段をトントントンッとリズミカルに登ると、古ぼけた屋敷が見える。この辺りでは珍しい純和風の家。
祖母の二人暮らしには広過ぎる気もするが、色々と住み着いているせいか今では丁度良いぐらいと思えてきたのはつい最近のこと。
「あら、Aちゃん。おかえり」
『ただいま、です』
門をくぐり、玄関に入ると祖母に出迎えられた。軽く会話を交わし自室へと足を進めた。長い廊下を歩きながら、Aは目の前でイタズラッ子のように笑う双子をひたすら無視していた。
「遊ぼー、遊ぼー」
「無視しないでー」
この五才ぐらいの男の子の双子は、Aが祖母の家に転がり込む前から住み着いていた。座敷童とかいう妖怪で、害はないのようなので追い出す事はせず放ったらかしにしていた。
祖母にはこの双子が見えていないらしい。そのため、寂しい思いをしてきたようで構って欲しいらしく、唐突に現れては遊べ遊べとせがんでくる。
「「ねぇー、ねぇー」」
語尾を延ばした口調、髪型は肩よりも短めの黒髪、着ている淡い水色の着物も同じ。仕草や動作は鏡のように反対。区別しようにも色々と似過ぎて出来ない。
『遊んであげるから、大人しくして』
泣きそうな顔でAを見る。うるうると涙目にして、捨てられた子犬のように見つめる双子にAは根負けした。
「「わーい」」
可愛らしく喜ぶ双子の横を通り過ぎて、襖を開ける。和室の部屋には、普段生活に必要な物しかなく、片付いていて綺麗というよりも、物が少ない。
そこにランドセルを置き、一息つくとすぐ、
「早く、早く遊ぼー」
双子に両手を引っ張られ、広い中庭に出る。
『何して遊ぶ?』
「「隠れんぼ!」」
息ピッタリの二人に流石双子と感心する。それから日が暮れるまで遊んだ。
「いーこと、教えてあげるー」
「よーかい、悪いことしてるー」
「「気をつけてー」」
双子はスッと消えていった。
たまに、双子は教えてくれる。良いこともあるし、悪いこともある。
(妖怪、ね)
目を閉じ、思い出すのはあの日の出来事。忘れることはない。失った我が家、失った大きく大切な存在。そして、あの忌々しい妖怪。
閉じていた目をゆっくりと開ける。
『気をつけよう』
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船長 - 更新楽しみにしてますね頑張ってください (2017年8月26日 8時) (レス) id: 8b9f7d7cc1 (このIDを非表示/違反報告)
船長 - 物凄い面白いです!牛鬼さんさすがです (2017年8月26日 8時) (レス) id: 8b9f7d7cc1 (このIDを非表示/違反報告)
AndyJyuri(プロフ) - 楽しく読ませていただいてます。一つだけ、18話で「か、神々しい」とありますが、読み方は、こうごうしいです。w (2017年6月17日 23時) (レス) id: d783bc4e9d (このIDを非表示/違反報告)
彗星(プロフ) - ありがとうございます。これからも更新できるだけ頑張っていくので、応援よろしくお願いします。 (2017年4月4日 20時) (レス) id: a61fc50fe1 (このIDを非表示/違反報告)
鈴 - とても良かったです。更新頑張ってください! (2017年4月4日 19時) (レス) id: 68c28fd3de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彗星 | 作成日時:2016年12月25日 14時