第二十三話 ページ29
「やぁ、みんな。おまたせ」
戻って来たリクオ。案の定、そこには誰もいなかった。お茶を飲み、ホッと一息ついていたAさえも。何も知らないリクオはその現状に戸惑う。
「アレ?」
みんなは?と疑問に思うリクオの脳裏に最悪のイメージが浮かんだ。たらり、と嫌な汗が。
同時刻。
『私って方向音痴だっけ…』
一人呟く。長い廊下でただ一人。近くに妖気を感じるため、妖怪がどこかでこちらの様子を伺っているはずだ。しかし、そんなことはどうでもいい。
ここどこ?とただただ疑問に思う。ただでさえ、だだっ広いこの屋敷。それに加え初めて来たのだ。今どこにいるかさえさっぱり分からない。戻ろうにも、戻れない。というのが今の現状だ。
「何かお困りか?」
ふと、声をかけられた。振り返れば、一人の男性が堂々たる風貌でそこにいた。名を牛鬼。現牛鬼組、組長である。和服を着こなし、Aを見る眉間には深い皺が刻まれている。
(美女の次は強面な男。色んな妖怪がいるなぁ)
そんなことさえ知らないAは質問に答えないままジッと、その男を見つめた。
「何かお困りか?」
もう一度問う牛鬼。ジッと見つめ合い、交わるお互いの瞳。表情がピクリとも変わらない仏頂面なその顔。小さい子だったら、確実に泣いてるなぁ。なんて不躾なことを考える。
『えー、と。…迷ってしまいました』
Aは苦笑いを浮かべ、どこか恥ずかしそうに返答する。
「ならば、案内しよう」
どこへ行きたい、そう問う牛鬼にAは目をパチクリさせたかと思えば、えーと、と牛鬼を視界から外し虚無を見つめる。
『お友達のところに行きたいんですけど、』
そうですねぇー。と小さく言葉を漏らすA。屋敷内に感じる沢山の妖気。その中から、ゆらの霊力らしいものを探す。
その際、牛鬼はAから一秒たりとも目を離さなかった。探るような鋭い眼差しがAを見つめる。
(警戒されてるなぁ)
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船長 - 更新楽しみにしてますね頑張ってください (2017年8月26日 8時) (レス) id: 8b9f7d7cc1 (このIDを非表示/違反報告)
船長 - 物凄い面白いです!牛鬼さんさすがです (2017年8月26日 8時) (レス) id: 8b9f7d7cc1 (このIDを非表示/違反報告)
AndyJyuri(プロフ) - 楽しく読ませていただいてます。一つだけ、18話で「か、神々しい」とありますが、読み方は、こうごうしいです。w (2017年6月17日 23時) (レス) id: d783bc4e9d (このIDを非表示/違反報告)
彗星(プロフ) - ありがとうございます。これからも更新できるだけ頑張っていくので、応援よろしくお願いします。 (2017年4月4日 20時) (レス) id: a61fc50fe1 (このIDを非表示/違反報告)
鈴 - とても良かったです。更新頑張ってください! (2017年4月4日 19時) (レス) id: 68c28fd3de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彗星 | 作成日時:2016年12月25日 14時