第十六話 ページ21
「やっぱり体調悪いんじゃない?今日はもう帰ったほうが、」
『だ、大丈夫。眩暈がするだけ、すぐ治まるから』
失敗した。まさかこんな事が起きるとは思わなかった。日本刀、もとい十六夜を持ってくるべきだったとAは溜め息を吐いた。
カナになるべく心配させないように作り笑いを浮かべる。
表面上はなんとか取り繕うAだが内心は、体の底から込み上げてくる不快さを我慢していた。
ーーユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ
「考えてみれば昔から変だった…。この人形…。気づけば髪がのびているようにも見えた」
Aの頭の中に人形の恨みの篭った言葉が響く。聞こえるのではなく、直接頭の中に語りかけてくるように。耳を塞いでも、言葉は止まない。
そして日記通りに人形の髪の毛がのびていく。
ーーユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ
(……やめて)
「2月28日。引っ越し前日」
ーーユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ
(…お願い、やめて)
「おかしい…しまっておいた箱が開いている…」
人形は鬼のような形相で、いつの間にか片手に刀を持って、襲おうとしていた。それはまるで、恨みを果たす、そんな風にAは思えた。
『日記を…読むのやめてぇぇーー!!』
Aは叫んだ。悲痛な声で。
悲しかった。ただ、悲しかったのだ。それは人形から流れ込んでくる感情がそうさせたのか分からない。
人形に人を傷つけてほしくない。そんな確かな思いがAの脳裏によぎった。
しかしそんな思いとは裏腹に突然人形が爆発した。
「浮世絵町…やはりおった」
その声は正しく転校生から発せられている。
「陰陽師。花開院家の名において。妖怪よ。あなたをこの世から…滅死ます!!」
(……陰陽師…花開院…)
Aの意識は陰陽師と名乗った彼女の姿を目に映し、意識はぷっつりと途切れた。
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船長 - 更新楽しみにしてますね頑張ってください (2017年8月26日 8時) (レス) id: 8b9f7d7cc1 (このIDを非表示/違反報告)
船長 - 物凄い面白いです!牛鬼さんさすがです (2017年8月26日 8時) (レス) id: 8b9f7d7cc1 (このIDを非表示/違反報告)
AndyJyuri(プロフ) - 楽しく読ませていただいてます。一つだけ、18話で「か、神々しい」とありますが、読み方は、こうごうしいです。w (2017年6月17日 23時) (レス) id: d783bc4e9d (このIDを非表示/違反報告)
彗星(プロフ) - ありがとうございます。これからも更新できるだけ頑張っていくので、応援よろしくお願いします。 (2017年4月4日 20時) (レス) id: a61fc50fe1 (このIDを非表示/違反報告)
鈴 - とても良かったです。更新頑張ってください! (2017年4月4日 19時) (レス) id: 68c28fd3de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彗星 | 作成日時:2016年12月25日 14時