第十四話 ページ18
朝、目覚まし時計で起きると、猫の姿が消えていた。まるで、初めからそこにいなかったかのように。
(妖怪に愛着が湧いたかな)
Aはどこか寂しさを覚えつつ、昨日まで猫のいた場所に触れるとそこはまだ微かに温かいかった。それに加え、開けた記憶のない窓が開かれ、カーテンが風に吹かれ前後に揺れている。
その事が、猫の存在を証明してくれた。
「あれー?ネコさんはー?」
「いなくなっちゃったのー?」
『元いた場所に帰ったんだよ』
妖怪には妖怪の居場所がある。人間と同じように。きっと、あの猫にも仲間がいるはず。あの猫の帰りを待つ仲間が。
「「そっかー」」
あっさりと引き下がる双子。まだ幼い見た目に反して双子もれっきとした妖怪。ちゃんと立場を理解しているようだ。
『リクオ君、カナちゃん。おはよう』
「おはよう!Aちゃん!」
「おはようA。いつもは遅刻ギリギリなのに今日は早いのね」
『今日は日直だからね』
Aはカナの何気無い辛辣な言葉に苦笑しつつ、靴箱に靴をしまい、シューズに履き替え、爪先をトントンと軽く叩く。
『じゃあ、また後で』
リクオとカナに手を振って別れた。
「あの…ごめんなさい」
『はい?』
いざ職員室へ向かおうとしていたAに突然見慣れない女の子に声をかけられた。
Aはその彼女を爪先から頭のてっぺんを品定めするように見た。
他の人とは違う。どこか不思議な雰囲気を放つ彼女。もっと言えば、神々しいとも言える雰囲気を纏っている。きらきら輝いている。そんな感じに。何故こんな風に感じてしまうのだろうか。Aは自然と食い入って見てしまった。
(この感じーー)
「職員室はどこですか?勝手がわからなくって」
知らないはずの懐かしさを覚え、自分の思考に浸っていたAは、ハッと我に返った。
『私もちょうど職員室に用事があるから、案内してあげる』
彼女は屈託なくのない顔でにっこり笑った。明るい笑顔だった。
「おおきに」
(この方言は、確か京都だったっけ)
Aはそんな事を考えつつ、彼女と共に職員室へと向かった。
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船長 - 更新楽しみにしてますね頑張ってください (2017年8月26日 8時) (レス) id: 8b9f7d7cc1 (このIDを非表示/違反報告)
船長 - 物凄い面白いです!牛鬼さんさすがです (2017年8月26日 8時) (レス) id: 8b9f7d7cc1 (このIDを非表示/違反報告)
AndyJyuri(プロフ) - 楽しく読ませていただいてます。一つだけ、18話で「か、神々しい」とありますが、読み方は、こうごうしいです。w (2017年6月17日 23時) (レス) id: d783bc4e9d (このIDを非表示/違反報告)
彗星(プロフ) - ありがとうございます。これからも更新できるだけ頑張っていくので、応援よろしくお願いします。 (2017年4月4日 20時) (レス) id: a61fc50fe1 (このIDを非表示/違反報告)
鈴 - とても良かったです。更新頑張ってください! (2017年4月4日 19時) (レス) id: 68c28fd3de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彗星 | 作成日時:2016年12月25日 14時