孤独の氷刃２

story55. ページ7

「それでは…行きます」


数刻後。王子の容態が安定したので計画通りに部族の地へと向かう。

ここは比較的、部族との距離が近い。

しかし山道を登ることになるので早めに出るのだ。


「姉さんっ。願いが叶いましたね〜」

「え…？」

「ほら、カムイ様を私たちの部族にお連れしてみたいな〜っていつも言っていたじゃありませんか」

「…そうだったわね。ええ、嬉しいわ……とても」

「私もです〜！まさかジョーカーさんとも来られるだなんて……あ」


先頭を歩く私の隣で笑っていたフェリシアが、突然話を止めた。

私が不思議に思って見やると、フェリシアはカムイ様の元へ駆け寄っていた。


「カムイ様〜」

「どうしました？フェリシアさん」

「あの、リリスさんを出してくれませんか？」


その言葉に、私の眉がつり上がる。

リリス。あの日から行方不明になり、行方のわからないあの子の名。

歩き続けながらも、耳を傾けた。


「リリスさんを？しかし彼女は今、星界に…」

「カムイ様、私が行ってまいりましょう」

「…ジョーカーさん」


カムイ様のそばに控えていたジョーカーが、名乗りを上げていた。


「なら…呼び終わったらリリスさんを通じて合図をください。引き寄せますから」

「承知しました」

「では…」


話し声がやんだ。

振り返って見てみれば、カムイ様は胸に手を当てて何かを念じているようで…

そこから、あの淡い光が漏れ出していた。

次の瞬間…


「…っ！ジョーカー！？」


そばにいた彼の姿が消えた。

同時に、光も消えてゆく。

私は驚き、少し立ち止まったのちカムイ様たちの元へと戻っていた。


「カムイ様っ…あ、あの…彼はどこに？」

「あぁ…驚かせてしまいましたね。すみません。星界というところに送ったのです」

「星界？」

「私たちの拠点なんです。そこに、リリスさんがいるので…」

「姉さんはあれから、リリスさんに会っていないでしょう？だから会わせてあげようと思って！」

「生きて…いたのですね」


よかった…という安堵と共に、彼女も倒さなければならない運命に悲しんだ。

リリスは、どう生き延びたのだろう。


「リリスさん、すっごく可愛くなってるんですから〜。楽しみにしてください！」

「…ええ」


その直後、またもやカムイ様の周りに現る光。

彼が戻ってきたようだ。


「おかえりなさ〜い」


私はまだこの瞬間まで、『可愛い』の意味を誤解していたのである。

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