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「っ、A?!」
「…、五条」
「お前っ、焦った……!」
「……、珍しいね、そんな必死な顔」
見たこともないような顔で、額に汗を浮かべて私の手を取る五条。
そっか。
まだ私にも、そんな顔してくれるんだね。
「必死にもなるだろ!……息してなかったんだから」
「……え、そうなの?」
「そうだよ、…あんまり動くな。出血がひどい」
「……夏油に会ったよ」
「……は、何言って」
「追い返されちゃったけど」
そう、焦った顔の悟に笑いかけると。
一瞬だけ。
ひどく苦しそうに瞳が揺れて。
「感謝しなよ、傑に」
「……うん、クズだけどね」
「傑ってばひどい言われようだね」
「五条も大概だけど、」
「えー?僕はナイスガイでしょ」
「はいはい、ナイスガイナイスガイ」
いつものおちゃらけた話し方に戻った五条。
さっきまで夏油と話していたからか、何だか不思議な気分。
「五条」
「ん?」
「ごめん」
「え?なにが?」
「……あの日。なんで殺したの、なんて言って、ごめん」
きっと1番辛くて、残酷な選択を迫られた五条を責めた。
死に目に会えなかったことが悲しくて、勝手に死んでしまった夏油に腹が立って。
それがずっと、胸につっかえていた。
それから五条の顔が上手く見られなくなって
私はいつまでも謝る機会を無駄にした。
なのにこうして、心配してくれる。
駆けつけてくれる。
「ごめんっ、」
寂しいのか、悲しいのか、嬉しいのか、痛いのか。
訳もわからずにまた涙が出た。
五条はそんな様子を見て、私の頭をクシャ、と撫でて。
「……いつの話してんの?もう覚えてないよ」
呆れたように、笑う。
___ビービー泣くなよ、汚ないな、と冗談混じりにデコピンを1発。
どうやら彼なりの返事のようだった。
「……あ、子供ほったらかしだったわ」
怪我だらけの私と、完全に気を失っている男の子。
二人を抱えて、硝子の所まで運んでくれた五条を以前よりずっと近い存在に感じた。
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日向(プロフ) - ひさん» わああもったいないお言葉ばかり…!!とても嬉しいです!そんな風に言っていただけると、描いてよかったなと思えます。素敵なコメント、大切にします!ありがとうございます! (2022年1月26日 22時) (レス) id: 67ceeec321 (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - 甘雫さん» 思いが一致したという言葉、とても嬉しいです!素晴らしいなんて言っていただけて、本当に光栄です。こちらこそ、嬉しすぎるコメントありがとうございます…! (2022年1月26日 22時) (レス) id: 67ceeec321 (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - たろ。さん» わああめちゃくちゃ嬉しいです…!読んでいただくだけでなくコメントまで、本当にありがとうございます! (2022年1月26日 22時) (レス) id: 67ceeec321 (このIDを非表示/違反報告)
ひ(プロフ) - 泣きました、、自分的にキャラに合ったセリフで特徴?捉えてて共感してすごいな✨て思ったし読みやすくて話が綺麗だし、とにかくめちゃ良かったです…✨素敵な小説ありがとうございました!完結お疲れ様でした✨ (2022年1月25日 23時) (レス) id: 858c606167 (このIDを非表示/違反報告)
甘雫(プロフ) - 映画は場面の転換が早く、感傷に浸る暇もなく泣くにも泣けませんでした。しかし、作者様の夏油傑に対する思いが私の思いと一致し、今泣けました。素晴らしい作品をありがとうございました。 (2022年1月23日 18時) (レス) id: fa6ec39255 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:日向 | 作成日時:2022年1月18日 1時