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「かわいい」が売りでしょ？ページ2

《10月13日午前9時42分
　九条家本邸 Aの自室》

大きな窓から差し込む朝日。

清々しい天気の中、私は1着のワンピースを手に取ってミラー付きのクローゼットと向き合っていた。

A
「白い花柄のワンピースは少し太って見えるかしら……。
　でもこのくらい愛らしい方が、カレに釣り合うと思うし……。
　ねぇ、センラ。どう思う？」

センラ
「とても似合っていますよ。お嬢様。」

くるりと後ろを振り返って執事のセンラの方を向けば、これ以上文句はない。とでもいったような表情で微笑んでいた。

私専属の執事。

執事にはランク付けがされており、最も低いDランクから最も優れたSランクまでが存在する。

その中でSランク執事であるセンラを私専属執事にする為に自ら引き抜いたのだ。

A
(単純に歳が近かったから。ってのもあるけれど、
　1番の決め手は、たった10歳で執事の基本を覚えて、高校生になる頃にはSランク執事の資格を得た100年に1度と言われている人材って事。)

A
(私にピッタリじゃない。)

日本の中で10本の指に入る財閥を【華族】と呼ばれ、そのうちのひとつが、この私の家である九条家なのだ。

A
(そんな私が、この服を着こなせないわけがない。)

A
「それは知ってるわ。
　そうじゃなくて、カレ好みに見えるかどうかを聞いてるのよ。センラ。」

センラ
「それは大変失礼致しました。
　私から見たらお嬢様はいつも大変美しいですが、そうですね。
　政宗様のお好みはこちらかと。」

そう言ってセンラがクローゼットから取り出したのは、私が普段着慣れた黒のボディーラインがハッキリと分かるタイトワンピースだった。

A
「『かわいい女』を目指しているのだけれど？」

センラ
「ですが……、お嬢様はこちらのお洋服のほうがお似合いです。」