〈曲パロ〉罪の名前〈そらる〉 ページ28
薄月にギラリと輝く鋭いナイフを、自分の方へ向けて掲げる彼女の瞳は朧気で暗闇へと飛び立とうとしている。
一思いにあの世に行けるのなら、少しの痛みだって大したことない。
包帯じゃ癒せないキズやケガに人々は存在を否定するように通り過ぎていった。
腫れぼったい頬に、引っ込んだ瞳。
とてもじゃないが綺麗とは言えないその顔を見て『呪われた』と石を投げる。
ケラケラと笑う高い声が耳に響いて離れない。
(だから、もういっそ)
きっとワタシ一人が居なくなったって、この世界が変わるわけでも終わるわけでもない。
後には何も残らない。そう思うと死ぬにも死ねなくて、生きてる方が辛いのに、生を頼ってしまう。
震える手。
カタカタと壊れたオモチャのように生と死の間を迷っている。
「……」
瞳を閉じてもいい思い出なんてこれっぽっちもない。
捨ててしまいたいこの人生をいざ捨てようと心に決めると、揺らいでしまう。
誰か、止めてくれと。
まだ、死にたくないと。
ああ。でもそれを認める人はいないから。
再度手を重ねて震えを無理にでも止める。
出来るよ。
ワタシなら、できるよ。
強く、つよく。
解くことがないように握りしめ振り下ろす。
「……っ！」
喉元で止められたその手は、はじめて人の温もりを知る。
あたたかくて、優しい手のひらの正体を見るためにゆっくりと振り返る。
「…そ、らるさ、」
零れ落ちる涙と解ける指。
力の抜けたその手を下ろし、彼にぎゅっと抱きつく。酷く憎いこの世界で、彼のような人が居るから。
溢れ出す涙は止めず、ただもう少し、このままで。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
いじめだとか、アンチだとか。
人を殺すような言葉がなければ、みんなが幸せになれる気がするのに。
なんて、綺麗事かな。
あんまり偉いのとは言えないけど、
まだ残ってるなら、笑われるくらい必死に生きたい。
〈MUSIC〉
罪の名前
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