【歌い手】恋する彼女 vol.6【完】

【短編】ハニーハニー症候群 前編 / nqrse ページ10

ショーケースに並ぶケーキは目を移す度にトキメキと空腹を運んでくる。

均等に並べられたイチゴのタルトにシンプルなチーズケーキ。大人に人気の抹茶に王道のショートケーキ。

どれをとっても美味しいはずのそのお店は、若者のに人気でインスタ映えを狙った店内が可愛いお店。

しかし、そんなお店が安いはずもなく一切れ800円というかなりのお値段。


「ハニー？どうかした？」
「あ、ううん。あそこのお店ね、いつも人気で美味しそうだなぁって」
「寄ってみる？」
「いいよいいよ！スーパーで二つ入ってるケーキ一緒に食べよう？」

質より量。
一人暮らしの期間が長かったわたしにとってそれは当たり前のものとなっていた。

「なら、ゼリーとかも買ってさ、パンケーキ焼こう？」
「！ナイスアイデア！」

安上がりな考えを馬鹿にせず、付き添ってくれるなるせちゃんは、本当にいい彼氏様だ。手を繋いで肩を寄せる。

「寒いねー」
「冬だしね。風邪ひかないでね、ハニー」
「大丈夫だよぉ。むしろなるせちゃんと一緒に居るから熱いくらい」
「矛盾してるよ」

綺麗に微笑むなるせちゃん。

あーあ。明日が学校なければもっと一緒に居られるのになぁ。無理なお願いしたってどうせかないっこないから、もう一度指を絡ませた。

宣言通りにいちごののったショートケーキを買って、二人で食べる。

「ハニー？そろそろ寝ないと明日起きれないよ？」
「うーん。もうちょっと、」
「夜更かしは身体に悪いよ。……それともオレと一緒には寝てくれない？」
「聞き方、ずるい」


甘やかし上手というか、わたしの扱い方に慣れた感じ。既に攻略済みの相手をただただ愛してくれる彼は本当に勿体ないくらいいい人だ。

「……明日、雨降らないかな…」
「そう言ってまたサボろうとする。ダメだよ。明日は朝、送ってあげるから」
「なら行く」


素直だなー。と笑いながら毛布に包まれたわたしの頭を撫でる。


その温度とリズムが気持ちよくて、意識を手放した。

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