＜UNISON＞シュガーソングはビターテイストー超人気バンドのキーボード、始めましたー (ページ1)

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1曲目♪ ラブソングは突然にページ1

「奏ってさあ、ロックって興味ない？」
　表参道にあるこじゃれたカフェでアーモンドカプチーノを飲んでいると、急に舞花が言い出した。
　「ないない。」
　私は即座に首を横に振る。
　ロックってだって―私の中では金髪の人が首振りまくってギター鳴らしてる印象しかないのだから。
　音町奏、国立日本藝術大学付属音楽高等学校1年生。
　自分で言うのもアレなんだけど、数々のピアノコンクールで1位受賞。
　新聞にもテレビにも出たことある、ちょぉっとした有名人。
　ロリータファッション大好きで、長い茶髪のウェーブヘア。
　高校で知り合ったヴァイオリン専攻の舞花いわく、「ザ・お嬢様」らしい。
　「やっぱねぇ。」
　舞花はため息をつく。
　「ぎゃ、逆に舞花だってロックに興味あるの！？」
　「ま、聞いてみてよ。」
　彼女はピンクのスマホの画面を操作して、動画を見せてきた。
　「シュガーソングとビターステップ」。そう書いてある。
　聴いてみると…
　なぜだろう。
　自然と涙がぽろぽろとこぼれ落ちていく。
　疾走感のあるメロディに、透き通るような歌声。
　心に刺さって離れない―
　「どう？いいでしょ。」
　にいっと笑う。
　「うん。どんな人たちの曲？」
　「それは…」
　舞花がMV付きの画像を私に見せた。
　「っ！？」
　私は赤面した。
　だって―私好みの顔すぎるよ…
　「あ、ギタボ？あたしはあんまり好きじゃないんだけど、まあイケメンでしょ？」
　「うん…」
　恥ずかしかった。
　「名前はなんて言うの？」
　「それは―」
　斎藤宏介。
　舞花が言った。
　その名前を繰り返す。
　「あ、そうだ。本題に入らなきゃ。」
　なんと、キーボードの募集をしているのだとか。男女不問らしい。
　「どう？一生に一度のチャンスだよ？」
　私は即座にうなずいた。
　「応募する、絶対に。」

　これが私の人生を変えた瞬間だった。