一九〇試合目 ページ4
(洋一視点)
かえってこない。
LINEの返信も、家にも。
遠征から帰ってきて早三日。家に帰ればシン、と静かで暗かった。ちょっと外にでも出てるのかと思ったが、夜遅くまだ小さい子二人を連れ出すとは思えない。
書き置きもない。電話をしても繫がらないし、LINEには俺が怒った時の返信がないままだった。
(怒らせた。ぜってぇ、怒らせた)
遠征から帰ってきた俺の予想は的中して、一日が経っても、二日が経っても、三日が経っても、戻ってくることも連絡が来ることもなかった。
そして四日目。月曜で、練習は休みなので義父母の元を訪れてみた。が、あては外れていて、二人ともA達がどこに行ったのか知らないらしい。
「困った子ね。プロ野球選手の旦那を置いて家出なんて」
「良いんじゃないか。高校まで良い子に育ってたんだ」
「今が反抗期?洋一くんも大変ね」
大変だと思うのなら、何故そんな笑顔なんだ。と、突っ込みたい。
「Aが行きそうなところってどこっすか?」
「本気で洋一くんから逃げようって思ってるなら分からないけど、追いかけて欲しいなら想像つく」
「教えて下さい!」
「え、いや」
語尾にハートがつきそうな愛嬌で言われ、俺は一瞬戸惑う。
「何でっすか!」
「だって面白くないでしょ」
「面白っ?!」
「誰だって、好きな人に迎えに来てもらいたいものじゃない」
「え?」
それは好きな人が俺以外にも?とか、色んな考えがグルグル回っている。すると義母はケラケラ笑って、手をこまねく。
「多分だけど、洋一君のことよ」
多分は要らないでしょう。と言おうとして止めた。
もしAが本気で怒ってるのなら、俺を嫌ってる可能性は十分ある。
「私がAの立場なら、自力で探して迎えに来て欲しいな」
そうだよなぁ、と俺は納得する。
それが面倒だなと感じる自分と、そんなことで良いのかと思う自分がいた。
否、見つけて「帰ってこい」なんて都合が良すぎる。
うじうじと考えていると、義母に背中をバシィっと叩かれた。いっ!と思わず叫ぶ。
「な〜に、うじうじ考えてんの。何があったか知らないけど、離婚してって言われないのならまだ望みはあるんでしょ?行動あるのみ!よ」
「うっす!」
背を押され、椅子が倒れる程の勢いで立ち上がる。
「行って来ます!」
「行ってらっしゃい!」
ペコリと頭を下げると、俺は家を出た。そして車に乗り、千葉へと向かった。
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aaa(プロフ) - 何度もコメントしてしまい申し訳ありません。私はこの作品が一番大好きです!毎日繰り返し読ませていただいています。この作品が読めなくなるのはとても寂しいです。素敵な作品を生み出してくださって本当にありがとうございます(;_;)やっぱり残して欲しい作品です(;_;) (2018年3月18日 13時) (レス) id: 0e392a7902 (このIDを非表示/違反報告)
豆腐戦士(プロフ) - aaaさん» コメントありがとうございます(^^)パシリシリーズから読んで頂いて有難いです!妊娠中の話も面白そうですね♪これからもよろしくお願いします!! (2018年1月28日 15時) (レス) id: 74fa4ef45e (このIDを非表示/違反報告)
aaa(プロフ) - パシリシリーズから面白くて一気に読んでしましました!倉持が大好きでいつも更新楽しみにしています^_^パシリシリーズから夏ちゃんが産まれるまでの間の話とかいつか読んでみたいな、、!と思っております☆これからも更新楽しみにしています^_^ (2018年1月21日 10時) (レス) id: 0e392a7902 (このIDを非表示/違反報告)
豆腐戦士(プロフ) - サンさん» サンさん、コメントありがとうございます!ハイキュー夢ばっか更新してすみません←頑張りますね。これからも応援よろしくお願いします(^^) (2017年11月20日 21時) (レス) id: 74fa4ef45e (このIDを非表示/違反報告)
サン(プロフ) - 更新頑張ってください!応援してます!! (2017年11月19日 19時) (レス) id: d100eeddb0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:豆腐戦士 | 作者ホームページ:
作成日時:2017年7月17日 14時